待ちに待ったはずの夢の国。テンション高めのジュンくんとゲートをくぐる。愉快なメロディを賑やかな園内。色んなところから楽しそうな悲鳴が聞こえる。おしゃれして、全力で楽しむつもりだったのに、あいつの事が頭から消えない。
『『今度の日曜、俺といてよ、』』
どういう意味よ。…いや理解はできるけど、あんな子犬みたいな顔で、言われたら…
『最初なに乗ろっか?』
ジュンくんの声で意識がもどる。眩しい笑顔でこっちを向いてる。折角の夢の国だ。沢山楽しまないと、勿体ないよね。
「んー…ジェットコースター!!」
『いきなり飛ばすね?!じゃっ、レッツゴー!!』
手当り次第、絶叫系に乗りまくった私達は、お昼頃には見事に死んでいた。
『ちょっと…トイレ行ってくる…』
ふらふらのジュンくんが立ち上がる。気をつけてと見送ってから、私も起き上がる。さすがに公共の場でベンチには寝れないしね。…お茶飲みたい。買いに行こっかな、いやジュンくん帰ってきてから。そんなこと考えていると、ペットボトルをふたつ持った彼が歩いてきた。
『どっちがいい?甘いのはいらないかと思って、水かお茶だけど』
「お茶欲しいな、ちょうど飲みたかったの。ありがとう。」
ほら、優しい。ふわふわしてるようで、ちゃんと考えてくれてる。少なくとも、ちらちら頭に浮かぶ、あいつに比べれば…。少し休憩すると、体調が戻ってきた。
「そろそろなんか食べよっか?」
『そういえば、お昼まだだったね。でっかい肉食べたいなー!!』
「私もー!!」
ほら、気が合う。食べたいもの、今の気分。ここまでピッタリあってる。アイツなんかより、絶対…
『僕ね、叶えたい夢があるんだ』
脈絡もなく話し始めた彼の方を見ると、真っ直ぐのお城を見ていた。太陽に照らされた外壁が、キラキラと光っている。
「…なに?」
『自分の好きな人と、その人が好きな人が一緒になること』
「…そこにジュンくんはいなくていいの?」
『うーん、そこが難しいんだけどね。最高に幸せに出来ないなら、いなくても…いいかな。寂しいけど』
「そっか…」
残念だけど、私はそうは思わなかった。好きな人が幸せになるなら私とがいいし、何より、他の人と生きる彼を見たくない。そんな考えは自分勝手なのかな。
「私だったら…」
『…っていう考えだったんだけど、○○ちゃんに会って変わったんだ。だから、今日はウォヌのこと考えないで。』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!