第50話

EP. 48
1,812
2023/02/11 11:00







_@_
……
 
あ、の……っ、




圧倒されるような視線に怖気付いて後ずさると、

ドレスの裾に足が引っかかって靴が脱げてしまう。







…!




すると彼は床に片膝をついて屈み、

脱げた私のパンプスを捨った。
 
彼はその体勢のまま

私の右足に丁寧な動作で靴を履かせてくれて。







_@_
…こちらの不注意で申し訳ございません
_@_
非礼をお許しください
 
い、いえ、そんな…、




再び立ち上がった彼はやはり相当な高身長で、

喉元まで出かかった言葉も飲み込んでしまう。




彼の目線に押し潰されかけていると

どこからか聞き覚えのある声がした。














_@_
ナムジュナ!
_@_
お前、そんなところで_




革靴の音を響かせながら

つかつかとこちらに歩いてくる大公。
 
見知った人に出会えた私は

安堵からほっと胸を撫で下ろした。




_@_
…あれ、あなた
_@_
よく来たね。一人?
いえ、ただその…
ユンギ様を見失ってしまって…
_@_
あぁそう…それは大変だね
_@_
ユンギが迷子になるなんて
…!?
ゆ、ユンギ様じゃないです!
_@_
ㅋㅋㅋ




大公は口元に手をやって短く笑うと、

ずっと無言のままでいる男性の肩を叩いて。




_@_
この人はキムナムジュン、
僕の護衛だよ
_@_
初めましてでしょ?




"ナムジュン" と呼ばれた彼は、


ニコリとはしないけれど

心做しか先程より柔らかい表情になった。
 
ナムジュンさんは大公よりも背が高くて、

夜闇を湛えたような真っ黒い瞳をしている。




落ち着いて見てみると、案外怖くはなかった。




_@_
……
 




…いや、でもずっと無言なのは怖い。
 
さっき少しだけ話してくれたのに……







_@_
ナムジュナ、彼女は公爵令嬢だぞ
_@_
失礼じゃないか…挨拶もしないなんて
_@_
…申し訳ありません
い、いえ、あの、
お気になさらず…
私もぶつかってしまってごめんなさい…




ナムジュンさんは何だかよく分からない人だった。
 
悪い人では無いことは確かだけれど、


大公の護衛をしているくらいなら

かなり剣技の腕が立つのだろうか。







摩訶不思議な彼について勝手に推測していると、


人混みを無理やり掻き分けて

こちらに向かってくる人の姿が視界に映った。














_@_
あなた!
 
! ユン_




「ユンギ様」と呼び返すよりも先に

彼は私を思い切り抱き締めてきて。




_@_
はぁ…ッ、っとに
_@_
探しただろ…居なくなるなよ…っ
ご、ごめんなさい…
_@_
無事か?何かされてないか?
_@_
怪我は?誰かに足踏まれたりとか…
ユンギ様、大丈夫ですよ ㅎ
ご心配なさらないでください
_@_
…そうか、
ならいい




頭にキスしてからやっと離してくれたユンギ様は、


すぐそこで何とも言えない顔をしている

大公とナムジュンさんを見やった。




_@_
…あなたに何かしましたか
_@_
第一声から失礼な奴
_@_
僕は今ここで会ったばっかりだよ
_@_
そうですか
_@_
ところでお前ね、少しその
甘やかしぶりをどうにかしなよ
_@_
どうしてパーティー会場で
あなたが怪我すると思うの?
_@_
万が一がある世の中ですし
_@_
過保護って言うんだよ。お前のそれは
_@_




大公からやんわりと説教されるユンギ様の

眉を顰めて少々拗ねた様子の顔が、


何だかいつもより幼くて可愛らしかった。

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