一触即発の火花を散らしながら、
大公は無理やり引きつった笑みを浮かべる。
ユンギ様は至極嫌そうな顔をして
私の髪を指に絡めながら大公を睨んだ。
ユンギ様は激高する大公を無視して、
ずっと黙っていた私と目を合わせる。
こちらを向いた瞬間にその表情が柔らかくなるから
少し不思議な感じだ。
大公の言う通り、
ユンギ様はわざと答えに困る尋ねた方をする。
喉元まで出かけた言葉を何度か飲み込みながら、
もごもごと口を動かした。
私がそう発すると、
ユンギ様の目は大きく見開かれて。
反対に大公は、満面の笑みを浮かべる。
大公が私の手に触れようとした瞬間、
ユンギ様の手が ガッ と大公の手首を掴んだ。
お互いの口調が威圧的で荒々しくなっていき、
何をそんなに揉めているのか理解できないが
パーティーにこんな雰囲気は似つかわしくない。
私はただ、大公が
何をしてくださるのか気になっただけで……
……1時間すら、いけませんか、ユンギ様
私はできるだけ明るい声音で言って
ユンギ様の服の裾を引っ張る。
顔が鬼のように強ばっていたユンギ様は、
ふっと笑って服を掴む私の手を握った。
その優しい眼差しに、私の心は安堵して。
私の手を握ったままでいるユンギ様を
大公は軽蔑するような目で見据える。
この口論の間もずっと、
ナムジュンさんは一言も話さなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!