第49話

EP. 47
1,800
2023/02/09 12:00







ユンギ様は "公爵" なだけあって、

やはり様々な貴族たちから声を掛けられていた。
 
しかし彼がまともに相手をしたのは

先程のハン先生くらいで、


それ以外は適当に握手や会釈で済ませてしまう。




私のことを詮索しようとする貴族に対しては、

地を這うような重低音の声で圧をかけたりもした。
 
見ているこちらの背筋が凍りつくような、

そんな血も涙もない眼差しで。







ユンギ様が一人の男爵と話していると、

不意に後ろから髪を引っ張られた。




い…ッ"




急な痛みに困惑して後ろを見回すと、

すぐそばに一人の貴婦人が立っていて。




…まぁ!本当にごめんなさい!
髪が…!




どうやら彼女が持っていた扇子の飾りに

私の髪が絡まってしまったようだ。
 
貴婦人が慌てふためいていると、

彼女のお付きの男性が丁寧に解いてくれた。




ごめんなさいね…、大丈夫?
…はい ㅎ
こちらこそ申し訳ありません




一瞬誰かにわざと引っ張られたのかと思ったが、

彼女はとても優しい目をした麗人で。
 
どこか私のお母様にも似ていた。




貴女もしかしてミン公爵様の…?




その言葉に頷くと、彼女は眉を下げて困り顔をする。




どうしましょう…
怒られてしまうかしら




貴婦人が不安げに私の髪に触れるので、

何だかじんわりと暖かく感じた。




ご心配なさらないでください ㅎ
ユンギ様はとってもお優しい方です
本当に…?
はいっ ㅎ




私の答えに彼女はにっこりと微笑んで、

頭を優しく撫でてくれる。
 
貴婦人は優雅に会釈をしてから

お付きの男性と広間の奥の方へ行ってしまった。







💭 素敵な人…




ゆったりと歩く後ろ姿すら美しく、

長い黒髪が儚げに揺れている。
 
本当に、お母様にそっくりだ。







見とれるようなため息をついて、

私は後ろを振り向いた。








ユンギ様…?







彼の姿がどこにも見当たらない




そこら中にいる紳士たちの中で

一際目立つはずの彼がいなかった。







ゆ、ユンギ様…、ッ




「離れるな」
 
そう言われていたのに、

あの女性と話しているうちにはぐれてしまった。




周囲を知らない人々に囲まれて、

途端に不安が襲い来る。




両手をぎゅっと握り合わせて

彼を見つけるために一歩下がると、


そのまま人の波に押されて

どんどん入り口付近まで戻されてしまった。







ユンギ様ぁ…っ




先程まで気にならなかったはずの

ズキズキと刺さるように痛く感じて、


不安と焦燥で大きな恐怖がり上がってくる。




挙動不審な様子でキョロキョロと

大広間を見回していると、


ドンッと背の高い男性と正面衝突してしまった。



































あっ、ご、ごめん、なさ…っ







それまでの恐怖も相まって、

完全に動揺しきった私はほぼ涙目でそう呟く。




威圧的な真顔の彼は腰に剣を携えており、

その柄に手を乗せていた。

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