第48話

EP. 46
1,900
2023/02/08 12:00







この屋敷は、大公によると

"パーティー用の別邸" らしい。
 
そのため、まるでお城のホールのように

広々とした大広間がこさえられているのだった。




天井は見上げるほど高く、

ホール中にオーケストラの奏でる音楽が響き渡る。
 
料理のいい匂いと貴族の高貴な香りが混ざって

非日常的な空間に心が踊った。







…ご覧になって、ミン公爵がご出席なさってるわ
なんて珍しい…あの隣に居らっしゃるのが?
えぇ、例の御令嬢よ







無数の目がこちらを好奇的に見ているが、

そんなことなど全く気にならなかった。




ひとつは、隣にユンギ様が居るから。
 
もうひとつは、それ以上にこの場が興味深いから。







ほとんど記憶に残っていない幼い頃の思い出が

ちらほらと頭の中で蘇って切なかった。







ユンギ君!




広間の中央まで来た時、

後ろから親しげにユンギ様を呼ぶ声がした。
 
ユンギ様は静かに振り返ると、

優しげな笑みを浮かべて握手を交わす。




_@_
こんばんは
_@_
お久しぶりです、ハン先生
こんばんはユンギ君 ㅎ
見ないうちに貫禄がついたね?
_@_
そうですか?特に変わりありませんよ
変わりないことはないだろう ㅎㅎ
そこに愛らしいお嬢様が居るじゃないか




"ハン先生" と呼ばれたその男性は、

白い髭を伸ばした有識そうな老人だった。
 
ハン先生に向かってお辞儀をすると、

彼は気立てのいい声で朗らかに笑う。




やぁ、こんばんは
君がレディジュエルだね
_@_
先生、そう呼ばないであげてください
_@_
"あなた" と
あぁ…そうだな、
気を悪くさせてしまったらすまない
いえ、ㅎ
あなた、私は一度
君に会ってみたかったんだ
私は "異才" についての研究をしている
研究…、




なるほど、だから「先生」と呼ばれているのか。
 
ハン先生はきっと博士号を持っているに違いない。




不快に思うかもしれないが…
もし良かったら今度、
君の "目" をよく見せてくれないかい?
…目、ですか?
あぁ。一体どんな風にその目から
宝石の涙が生まれるのかが知りたい
もちろんユンギ君と
来てくれて構わないよ ㅎ
彼の異才についても研究しているから




ちらりとユンギ様の方を伺っても、

彼は特に訝しげな顔をしていなかった。
 
それなら信用できるだろう。




私自身もこの涙について知りたいので、

笑顔で「ぜひ」と頷いた。




ハン先生は満足気に笑ったあと、


ユンギ様の肩を叩いて

今度は別の人のところへ向かった。







…研究って、
痛いですか…?
_@_
ㅎㅎ まさか
_@_
ハン先生はお優しい
_@_
とっくに70超えてるらしいが…
まだまだ現役って感じだな
すごい先生なんですね ㅎ
_@_
もう50年来の付き合いか、多分
5、…




考えてみれば、ハン先生は

ユンギ様からしたら赤子同然の年齢かもしれない。
 
あまりにも平然と過ごしているから

一瞬本当に忘れてしまうけれど。




ユンギ様は一体いくつなのだろう……

プリ小説オーディオドラマ