第4話

無い物ねだり
979
2018/01/28 04:09
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
で?なんか手がかりはないのか?
知念 侑李
知念 侑李
あー………小さい頃に彼女からもらった写真なら
僕は肩に下げていたショルダーバッグから君の写真を取り出す。

相変わらずのボロボロさではあるが、君の顔が写っている部分はもちろん綺麗なままだ。
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
………なんでこんなにボロボロなんだよ
知念 侑李
知念 侑李
まぁ、気にしないでよ
ますます僕が不審に思われたような気がする。
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
………ん?
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
そう言えばお前、なんでこの子がいなくなったのか知ってるのか?
知念 侑李
知念 侑李
いや……
そう言われてみれば、あの子はなぜ突然僕の前からいなくなってしまったんだろう。

僕は必死に記憶の中の君について思い出そうと試みる。
君が好きだった花。
君が好きだった動物。
君が憧れていた………世界。


どうしてだろう。
君が好きだったもの、望んでいたものしか頭には浮かんでこないや。
君との楽しかった記憶、嬉しかった記憶、悲しかった記憶………君がいなくなった理由。


その全てが思い出せないんだ。
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
………おい、侑李?
頭を抱えうつむく僕は、次第に山田くんの声さえも耳には届かなくなっていった。

自分の手に覆われた暗い闇の中で僕は意識が遠のいていくのを感じた。
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
侑李!?侑李!!
最後に聴いたのは、僕の名前を必死に呼ぶ涼介の声だった――――。



思えば僕はこの十八年間、ずっと君の面影だけをただ追って探して、君があの町へ帰ってくる事だけをただ待ち望んで生きてきた。

何度か別の女の子から好意を寄せられた事もあったけど、その度に僕は思っていた。


それが君だったらいいのに、と。



………なんて、僕のないものねだりに過ぎないけど。
そう言えば最近あまり寝ていなかったな。
別に不眠症と呼ばれるような病的な理由ではないと思うけど。
なんてそんなことを夢の中で思い巡らせていた僕の意識は次第に現実へと引き戻されていった。
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
――――起きたか。大丈夫かお前?
目を覚ますとそこは、先程まで僕が腰かけていたソファの上だった。

山田くんいわく、僕は突然前のめりに倒れたかと思えばそのまま眠ってしまっていたらしい。
知念 侑李
知念 侑李
うん、ありがとう山田くん
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
大丈夫か?
知念 侑李
知念 侑李
うん大丈夫だよ。
………最近あまり寝れてなかったから寝不足だと思うな
そう告げると山田くんは深いため息をこぼしながら「お前なぁ……」と頭を抱えた。
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
なんだ不眠症か?
知念 侑李
知念 侑李
そういう訳じゃないと思うんだけど……
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
そんな事じゃもし再会できたって相手を困らせるだけだぞ
山田くんのその言葉に僕は絶句した。
確かにそうだ。僕がこんなことになっていては、もし君に会えたとしても………。

返す言葉が見つからない僕の背中を少し強く叩いた山田くんは、再びタバコを口に咥えながら言った。
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
結局彼女に関しては何も知らないのか?
知念 侑李
知念 侑李
名前と住んでた家……あとは全然、手がかりになりそうなものは何も
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
ふぅん………お前の親とそいつの親との仲は?
知念 侑李
知念 侑李
………よかった……と思う
正直お互いの両親の仲と言われると言葉が詰まる。そこまで把握はしていないから。
かすかに残っている記憶を頼るとすれば、仲は悪くもないように思える。
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
じゃあお前とそいつの住んでた家の周辺をあたれば少しは何か分かるんじゃないのか?
知念 侑李
知念 侑李
そっか………そうだね!
目を輝かせた僕を見て、山田くんは鼻で少しだけ笑った。
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
で、そいつの名前は――――?
知念 侑李
知念 侑李
……あなた

プリ小説オーディオドラマ