眩しい光が、まだ眠たい僕のまぶたを無理矢理開かせる。
渋々、ゆっくりと目を開けると隣には茶色い短髪の男。
――山田くんだった。
……いや、それ以外だととても困るけど。
どうやら、僕が身体を起こしたことで山田くんの方も目が覚めてしまったらしい。
こちらへ寝返りを打つと、どこか虚ろな目で僕をぼんやりと見つめていた。
そういえば、僕はいつ眠ったんだろう。
昨日の曖昧な記憶をなんとか掘り起こし、考える。
昨日は確か、母さんにあなたの事を聞いて………。
ああそうだ。
あなたの両親が殺されたあの時の事を思い出したんだ。……いや、もしかしたらあれは一種の“夢”かもしれないけど。
最後のは聞きたくはなかった。
けど、僕から聞いておいてそれはちょっとあんまりかもしれない。
「そっか」と一言つぶやくと、山田くんには“ありがとう”とだけ告げた。
あの日、初めて夜更かしして、昼までぐっすりと寝ていたのを今でも覚えている。
確かあの日、起きたら既にあなたはこの町から姿を消していた。いくら母さんや父さんに問いただしても、何も答えてはくれなかった。
そんな彼女が叔母に引き取られていたなんて………。
なぜ両親も君も、何も教えてくれなかったんだろう。もしもあの日あなたがいなくなるって分かっていたら………。
僕は君に「さようなら」と言えただろうし、今こうして山田くんと君を探す旅に出ようとしなくて済んだだろう。
なのに、なのに。
絶望する僕の肩を、身体を起こした山田くんが力強く叩いた。
思わず山田くんの方へ振り向いた僕に、山田くんは気だるげなピースサインをくれた。
急いで僕はクローゼットから、高校の修学旅行の時に使用したキャリーバッグを取り出し、中に服と下着、その他もろもろ大事な物を詰め込んだ。
どうやら山田くんにはタバコとタバコを買うためのお金があれば十分らしい。
ホテル等の泊まり賃も、なんだかんだで「依頼の料金」として僕が出す羽目になってしまった。
この後、結局僕らは山田くんの家へと向かうことになってしまった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!