第10話

出発の朝
853
2018/02/04 03:16
眩しい光が、まだ眠たい僕のまぶたを無理矢理開かせる。 
渋々、ゆっくりと目を開けると隣には茶色い短髪の男。
――山田くんだった。
……いや、それ以外だととても困るけど。
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
ん………あ、起きた?
どうやら、僕が身体を起こしたことで山田くんの方も目が覚めてしまったらしい。

こちらへ寝返りを打つと、どこか虚ろな目で僕をぼんやりと見つめていた。
そういえば、僕はいつ眠ったんだろう。
昨日の曖昧な記憶をなんとか掘り起こし、考える。

昨日は確か、母さんにあなたの事を聞いて………。


ああそうだ。
あなたの両親が殺されたあの時の事を思い出したんだ。……いや、もしかしたらあれは一種の“夢”かもしれないけど。
知念 侑李
知念 侑李
ごめん、僕どうなってた?
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
あー……なんか呆然とした様子で自分の部屋に行ったよ。で、ベッドに横になって泣いてた
最後のは聞きたくはなかった。
けど、僕から聞いておいてそれはちょっとあんまりかもしれない。
「そっか」と一言つぶやくと、山田くんには“ありがとう”とだけ告げた。
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
あれから聞いてみたけど、あなたは親戚の叔母の家に引き取られたらしいぞ
知念 侑李
知念 侑李
………叔母の?
あの日、初めて夜更かしして、昼までぐっすりと寝ていたのを今でも覚えている。

確かあの日、起きたら既にあなたはこの町から姿を消していた。いくら母さんや父さんに問いただしても、何も答えてはくれなかった。

そんな彼女が叔母に引き取られていたなんて………。


なぜ両親も君も、何も教えてくれなかったんだろう。もしもあの日あなたがいなくなるって分かっていたら………。

僕は君に「さようなら」と言えただろうし、今こうして山田くんと君を探す旅に出ようとしなくて済んだだろう。
なのに、なのに。
知念 侑李
知念 侑李
なんで何も言ってくれなかったんだ………
絶望する僕の肩を、身体を起こした山田くんが力強く叩いた。
知念 侑李
知念 侑李
いだっ………!な、なにす……
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
絶望してないで尚更行くしかないだろ。
おばさんには許可貰っといたし、さっさと準備しろ
思わず山田くんの方へ振り向いた僕に、山田くんは気だるげなピースサインをくれた。

急いで僕はクローゼットから、高校の修学旅行の時に使用したキャリーバッグを取り出し、中に服と下着、その他もろもろ大事な物を詰め込んだ。
知念 侑李
知念 侑李
……あれ、そういえば山田くんは?
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
ん、何が?
知念 侑李
知念 侑李
持っていくものとか………
どうやら山田くんにはタバコとタバコを買うためのお金があれば十分らしい。
ホテル等の泊まり賃も、なんだかんだで「依頼の料金」として僕が出す羽目になってしまった。
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
……あ、でも俺服ねぇや
知念 侑李
知念 侑李
え………
この後、結局僕らは山田くんの家へと向かうことになってしまった。

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