第23話

叔母の証言
736
2018/02/16 06:07
知念 侑李
知念 侑李
……なんで亡くなったんですか?
事故?それとも………
君の叔母
さぁ。自殺なのか、他殺なのか……どうなのかしらね
叔母の話によると、都内の部署に務める刑事を名乗る、当時20代半ばくらいの男が

“猫俣あなたさんが中央区の新川2丁目と、同じく中央区の佃2丁目を繋ぐ中央大橋から飛び降りたそうで、遺体はまだ見つかっていないんですが……”

と突然家を訪ねてきたらしい。
知念 侑李
知念 侑李
で、それを簡単に信じたんですか
君の叔母
正直嬉しかったのよ。私にとってあの子は邪魔でしかなかったから
山田くん(山田涼介)
山田くん(山田涼介)
邪魔………
小さく呟いた山田くんの口からは、それ以上何も出ることはなかった。代わりに震える彼の唇が何かを語っているようにも見えた。
知念 侑李
知念 侑李
なんで……どうしてあなたが
君の叔母
………それは、ね
叔母さんは眉をひそめながらもそっと口を開いた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
兄さんが仕事で静岡から帰ってきた際、婚約者として連れてきたのは、ロシア人のメアリーさん。後にあなたの母親になる人ね。 


彼女は当時20代前半で、私よりも3つくらい歳が下だったわ。ぱっちりと開いた綺麗な二重まぶたに、色素の薄い灰色の瞳。外国人特有の高い鼻に、人形のような色白の肌。

そして、モデルのようにほっそりとしたスタイルの良い体つき。一目で兄さんの好みの女性だと分かったわ。
だって、メアリーさんたら本当に美人だったんだもの。


お父さんもお母さんも驚いてはいたけど「お前の好きにすればいいさ」と言って2人の結婚を認めた。でも私は国際結婚なんて断固反対だったの。
だって、文化も何もかもが違うあの女と上手くいくわけがないじゃない。なのに、兄さんったら――。



「そんなのして見なきゃ分からないだろ」


なんて、私の心配をまるで馬鹿にするかのように軽くあしらったのよ?

ショックだった私は、“きっと兄さんはあの女の美しさに魅了され、正常心を失っているんだ”と思い込む事にしたの。だってその方が気楽じゃない。
……まぁ、それはエゴでしかないと言われてしまえばそれまでなんだけどね。

それからずっと私は、兄さんの心を虜にして惑わせるあの女が許せなかった。
結婚してから兄さんは東京の実家を離れ、メアリーさんが暮らしていた静岡の方で暮らし始め、その何年後かには1人の女の子を授かった。そう、あなたの事ね。
君の叔母
………っ
生まれたばかりのあなたは本当に可愛らしかった。母親と似た色白で、目がぱっちりとしていて。
貴女の母親を恨んでいる私に対してあの子は素敵な笑顔をくれたのよ?もうそれはそれは本当に嬉しかったし、でもその反面妬ましかった。
貴女なんていなければ、2人の仲が悪くなった時簡単に別れられるというのに。貴女さえいなければ、って。


今思えば私、兄さんに恋をしていたのかも知れないわね。

プリ小説オーディオドラマ