私、西園寺 舞琴は今さっき死んだ。
死んでちょっとしてもみんなの声は聞こえた。
宙…………ほんとごめんね……
心菜……親友でいてくれてありがとう………
矢上くん、心菜を頼んだよ………!
──だんだんみんなの声も聞こえなくなってきた。
お腹の子、刺されて痛かったかな……
いくら憎き悪魔の子のでも自分の子に変わりはないから、心配。
せっかくできた新しい命なのに………
そんなことを思っていると、急にお腹がかすかに軽くなるのを感じた。
そして、かすかに声が聞こえた。
じいちゃんだ………!
結界、破れたんだ!良かった………
これでみんな無事に保護される。
ごめんね
ありがとう
じいちゃん
じいちゃん………
じいちゃんて誰だってけ…………?
あれ、私、今まで何してたんだっけ……?
というか、私は誰?
何かすごく嬉しくて、悲しい思いをした気がするけど、思い出せない…………
私はいつの間にか草原にいた。
程よく風が吹いていて、気持ちいい。
ちょっと歩いていると、声がした。
苦しそうに喋るその声を聞いて、胸がキュッと締め付けられた気がした。
急に強い風が吹いて、目を瞑った。
目を開けると顔はよく見えないが人が立っていた。
問いかけても「舞琴」と言うばかり。
行けばわかるかなと思って行ってみることにした。
だんだん歩くスピードが速くなる。
「早くあの人の所へ行きたい」
不思議とそう思うようになっていた。
両手を広げて待っていてくれている。
私は飛びついた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。