あなた:侑くん,本当によかったの…?
侑:?おん。俺が無理やり誘ったんやし
あなた:そんな無理やりなんて思ってないよ…?
侑:ええから。奢らせとき
あなた:ありがとう…!
俺はあなたと昼食を済ませて店を出た
好きな子と食べる飯っていつもの100倍美味い
会計は全部俺が済ませると案の定あなたは気にしとった
やけど好きな子に金出させる気はないで
侑:ほな,帰ろか
あなた:うん!
侑:送るわ
あなた:ありがとう…!
別れるのは名残惜しかったけど
付き合ってるわけでもない子を
これ以上無理やり付き合わせるのは申し訳ないから
俺はこのまま送っていくことを決めた
侑:なぁ
あなた:?
侑:サムともああいうとこ行ったん?
あなた:え……?
" 知ってたの? "
そう言わんばかりの顔であなたは俺を見た
" あたしの事を知らないの? "
あなたのあの言葉は
サムの元カノなのに知らないのかっちゅー意味や
サムの元カノやって知っとるなら
もちろん何で別れたかも知ってるやろうし
それなのに何で話しかけてくるのか
そういう意味やったんやって気付いた
あなた:……知ってたんだね
侑:……まぁ,知ったのはほんま最近やけど
あなた:あたしと出会った時は?
侑:全然知らんかった
" そうだったんだね "
あなたは眉を下げながらそう微笑んだ
あなた:知ってるのにあたしを軽蔑しないの?
侑:え?
あなた:別れた理由,聞いてるよね?
侑:………!
あなた:知ってるのに……あたしに関わるの?
あなたは何処か悲しそうな顔で
それでも微笑んどった
" 軽蔑しないの? "
そんなんほんまにやった奴が使う言葉やない
侑:……騙しとったなんて嘘やろ
あなた:え……?
侑:サムがモテるから落とそうとしたなんてそんなん嘘やろ
あなた:ッ!!!!
あなたは多分嘘が下手や
俺がそう言った瞬間驚いた顔をしたあなたは
" 騙しとった訳やない "
って言っとるようなもんやった
あなた:……どうしてそう思うの?
侑:何となく。あなたはそないな事する奴やないと思っとるからや
あなた:あたしの事何も知らないのに?
侑:え______?
あなたから笑みが消えた
ほんまに______悲しそうな顔をしとった
侑:……確かに関わって日も浅いしあなたの事何も知らんかもしれん
あなた:………
侑:やけどあなたはそういう事するような奴やないって俺の勘が言うてる
あなた:え……?
あなたは驚いたような顔で俺を見上げた
こんな悲しそうな顔して欲しくない
俺は______あなたを守りたいから
侑:なぁあなた,教えてくれへん?
あなた:え…?
侑:あなたはサムを騙しとった訳やないよな?
あなた:ッ……
あなたは下唇を噛んで俯いた
自分の手を握り締めて微かに震えていた
なぁあなた______教えてや
俺はあなたの手を優しく包み込んだ
侑:あなた,俺は言うたで
あなた:え…?
侑:俺はあなたの味方や
あなた:………!
俺がそう言うとあなたは涙を流した
そしてゆっくり____口を開いた
『 あたしは____治くんを騙してた訳じゃない。』
侑:……ほな,何で別れたん?
あなた:……それは……言えない
辛そうな顔をするあなたから
何となくそれ以上は聞けなかった
やけど一つ確かになったことは
" あなたはサムを騙しとった訳やないこと "
やからサムと別れた事にはまた別の理由があること
つまりあなたは
まだサムの事が好きなんか______?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!