第57話

小学生の頃。
3,595
2020/11/29 09:31




















『 いや!やめてッ…!ごめんなさいッ…! 』






















あなたの家は昔から複雑だった

お父さんとお母さんの仲が悪く

お父さんは殆ど家には帰ってこなかった

お母さんは夜の仕事をしていて

その疲れと苛立ちを全てあなたにぶつけていた





















飯綱:あなた,けがしたの?いたくない?




あなた:うん,ころんじゃったの!へいきだよ!



















小さい頃からたまにあなたは痣を作ってきた

本人はずっと" 転んだ "と言い張っていて

小さかった俺はそれをずっと鵜呑みにしていた

だけど大きくなるにつれて気が付いた

その痣は______あなたのお母さんが作ったものだと






















あなた:またあしたね!




飯綱:きょうもおうちでひとりなの?




あなた:うん,だけどへいきだよ!ひとりでおるすばんできるもん!





















お母さんは夜の仕事,お父さんは殆ど帰らない事から

あなたは昔から夜は一人で家にいた

お母さんがあなたの為に夕飯を作っていく事は無い

だからあなたは毎日夜ご飯は食べなかった

























ピンポーン






















俺はたまにお母さんに頼んで

俺の家の夕飯のおかずをあなたの家に届けた

















飯綱:あなた,おれだよ。つかさだよ




あなた:つかさくん……?





















あなたはこうやって名前を言わないと家から出てこない

家から出てきたあなたはまさに寝起きだった


















飯綱:ねてたの?




あなた:うん……もうねようとおもって……




飯綱:ごはん,おかあさんがくれたからいっしょにたべよ




あなた:え……いいの……?


















栄養が足りていなかったあなたは本当に小さかった

あなたは俺の事を見上げながら不安そうに眉を下げていた



















飯綱:どうぞ,めしあがれ




あなた:いただきます……!

















持ってきた物を広げると

あなたは目をキラキラさせて食べ始めた

やはりお腹は空いていたのだろう

嬉しそうに食べるあなたを見て俺も嬉しかった



















飯綱:じゃあ,またあしたね




あなた:うん,ごはんありがとう…!




飯綱:いいんだよ,じゃあね!


















俺は扉を閉めようとした

その時見えたあなたの顔はやけに寂しそうだった

当たり前だ。寂しくないはずがない

毎日家で一人なんて____絶対に寂しい


















飯綱:あなた




あなた:………?




飯綱:あしたすぐにむかえにくるからまってろよ!




あなた:……!うん……!
























俺があなたにそう言って頭を撫でると

あなたは嬉しそうに微笑みながら頷いた

これが______小学生の頃の話。














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