第5話

汚い字で悪かったな。
6,313
2020/11/08 00:59




















担任:えーこれからこの前の小テストの採点を隣の席の人としてもらう

















新学期が始まって数週間が経った

数回目の英語の授業で小テストがあって

それの採点を隣の席の奴とするらしい

俺の隣の席は______





















あなた:えと………お願いします




侑:おん。よろしゅう

















例のサムと角名が見とったあの子やった

別に興味もあらへんから

あれから特に話す事も気にする事もなかった
















侑:ん




あなた:あ,ありがとうございます…

















俺は回ってきた自分のプリントを其奴に渡した

此奴は俺のファンの雌豚共みたいに

嬉しがってプリントを受け取ることは無く

寧ろ怖がるような,怯えたように受け取った






















侑:( 此奴は俺のファンではなさそうやな )






















俺も其奴からプリントを受け取った

綺麗な字で書かれた" 船水あなた "の文字

俺はそこで初めて名前を知った






















侑:( ほぼほぼ正解やん )




















採点を進めていくと殆ど丸やった

点数は96点で頭のええ奴なんやと思った


















あなた:………





侑:?
















視線を感じて隣を向くと

其奴は何かを言いたそうに俺の方を見ていた





















侑:なんや?




あなた:………!あ,の………

















視線に気付いた俺が問い掛けると

其奴は驚き,そして口篭った



















あなた:あの………




侑:?




あなた:これ……n と m どっちですか……?





侑:は?




















俺は其奴の持っとる自分の答案用紙を見た

n なのか m なのか

確かにわからんような汚い字が書いてあった




















侑:それ m やで




あなた:……!そ,そっか!ごめんね…!




侑:いーや。汚い字で悪かったな




あなた:え………?


















俺が其奴に謝ると

やけに驚いたような顔をされた




















侑:これから綺麗な字頑張って書いてみるわ




あなた:え………?




侑:せやからまたよろしゅうな



















俺は採点し終わった其奴のプリントを

渡しながらそう言った




















あなた:う,うん……よろしくね……!




侑:………!


















答案用紙を受け取る時に匂った

花のような良い香りと優しく微笑む顔に

少しだけ______胸が高鳴った。











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