第60話

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2022/07/28 13:33





楠木 あなた
結局用事は何なんですか早く帰って寝たいので手短にお願いします
二口 堅治
来てそうそうやめてくれ




私たちが今いるのはこじんまりとしたカフェ。




ガチで何しに来たねん




二口 堅治
奢ってやるからんな嫌そうな顔すんな
楠木 あなた
わー、おいしそうだな何頼もうかな~
二口 堅治
お前ほんと現金なヤツだな




奢ってくれると言われて気分良くならない人なんていないでしょ




楠木 あなた
にろ先輩好き
二口 堅治
……そういうこと簡単に言うな
楠木 あなた
冗談じゃん
二口 堅治
だぁから!!冗談でそういうことを.........っあぁもう!!うざい!!
楠木 あなた
にろうるさい
二口 堅治
先輩をつけろ敬語使え




今更そんなこと言うなし





楠木 あなた
なんでも良いから早く要件言ってください
二口 堅治
そんな急かすなっての



はぁ、と溜息を零し、頬をかきながらにろ先輩は気まずそうに視線を落とした




二口 堅治
ぶっちゃけた話用事があるってのは嘘
楠木 あなた
帰りますね
二口 堅治
待て待て待て




なんやねん、用事ないなら帰らせろっての



『あぁもう!!』と叫びながら頭を掻きむしるにろ先輩




そうしたいのはこっちなんですが。




情緒不安定なのか?この人





二口 堅治
とにかくっ!俺がお前を誘ったことに理由はない!
二口 堅治
いや理由がねぇのは嘘だけど……うん、格別なにかあるわけじゃない
楠木 あなた
帰りますね
二口 堅治
だから待てって話を聞け生意気野郎




生意気野郎はにろ先輩じゃん。私野郎じゃないし。




二口 堅治
お前はさ、全国行けると思う?



声のトーンをかえ、突然そんな真面目な質問をされた




楠木 あなた
私に分かるわけないじゃないですか
二口 堅治
そうだよな、お前に聞いたのが間違ってた悪い




酷い言われようだな.......




楠木 あなた
私に聞くのを間違えた、って言うけど
楠木 あなた
未来のことなんて誰にも分からないでしょ
二口 堅治
それもそうだな、質問間違えたわ




ゴホン、と咳払いをし、再び私に問いかけた





二口 堅治
お前は、全国行きたいって、そう思う?
楠木 あなた
・・・




行きたいかどうか、か。



楠木 あなた
分かんないです
二口 堅治
結局分からないんかい




確かに、私の中でこの場所は大切になりつつある。




けれど、全国行きたいだとか、そんな大きな目標を掲げたことなんてないから、私にはまだ分からない




だけど……………




楠木 あなた
負けたくないって気持ちが、イコール全国行きたいって気持ちなのだとしたら.....
楠木 あなた
全国、行きたいかな
二口 堅治
.....そっか




こうしてにろ先輩と真面目な話をすることはほとんどないから、なんだかむず痒い




にろ先輩の返事を待っていると、彼がふっと笑った




二口 堅治
んじゃ、頑張んないとな




まぁ、選手たちは全国行くために頑張ってるわけだしあたりまえなんじゃ.....




そう思って首を傾げていると、注文していた品が届いた




特に何も発することなく、にろ先輩はコーヒーを啜る。




私も飲もうとカップに手を触れた。





二口 堅治
試合終わったら、話したいことあるから
二口 堅治
だから、待っててほしい




なんのことか、とにろ先輩の顔を見つめると




いつもの彼には似つかない程に、




真剣な表情をしていた




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