試合あった日に買い物に付き合わされる私
やっぱパワハラとしか思えないしこの人の体力意味わからん
私は応援してただけで疲れたわけない、みたいな感じで言われると、私だけバレー部の仲間じゃないみたいに感じる
ふんだ、にろ先輩なんて知らないし
そう言いながら、横に並ぶにろ先輩は手を伸ばし、私の頭に乗せた
はぁ、と溜息を零しながら私の頭から手をおろした。
先程まであった温もりが離れていって、何となく寂しいななんて思ってみたり。
そっと自分の頭に触れると、先程の感触を思い出して自然と頬が緩んだ気がした。
2人並んで歩いていたら、突然にろ先輩が足を止めた。
少し後ろにいるにろ先輩の方へと体を向けると、
彼はジャージのポケットに両手を突っ込み、真っ直ぐ私方を見ている。
不思議に思って首を傾げると、暗がりの中電灯に照らされたにろ先輩は、真剣な顔をしていた。
なんだろうかと気になっている私を傍目に、にろ先輩は歩き出した
『なんとでも言え~』と言いながら手をひらひらと振るにろ先輩に小走りで駆け寄り、また隣に並んで歩く。
横目でにろ先輩の顔を見てみると、清々しい顔をしていたような気がした。
そしてどうしてなのか分からないけれど、
そんなにろ先輩の顔を見て、なんだか嬉しくなった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。