第17話

乙女ゲーが十四つ
2,504
2021/03/07 06:00

『コウ?さっきから思い詰めた顔してるけど、どうしたの?』
私の手を引くコウはさっきから一言も喋らない。
『(こんなコウは以来だな…)』
コウ「なあ…あなた」
『うん?』
着いたのは教室。
……………ここ、私1番苦手なんだよなあ
コウは、水槽の横の壁に貼ってある星座の紙をめくった。
『……え、?』
思わず息が詰まった。
コウ「……これ、どう見てもあなただよな」
星座の紙に隠れていて誰も気づかなかったのだろう。
裏には一面、ありとあらゆる場面の私が写った写真が貼られていた。
『なんで…………』
コウ「…伝えようか正直俺も迷った。でも、」
『…うん、大丈夫、分かってるよ。
ここから出る鍵になりそうだからだよね?
コウは私の事いつも考えてくれてるもん、大丈夫、だよ……』
ダメだ、声が震える。
コウ「…(お前が他人に大丈夫なんて言ってる場合じゃないだろ)」
思わず後ろに後ずさって、ガタン!と机にぶつかる。
机が揺れて花瓶が床に落ちるその音は、色々な恐怖がゴチャゴチャになって私の耳には届かなかった。
コウ「………あなた、狼裁判が始まる」
『………………そうだね。
いつも通りに振る舞わなきゃ、』
コウ「あなた」
その瞬間、ギュッと暖かい温もりが私を包んだ。
『…コウ?』
コウ「色々重なって辛いだろ…
…無理に笑おうとするな、俺がついてる、大丈夫だ」
あまり変わらない背丈なのに、随分とコウが大きく見える。
『………ブッ』
コウ「…………おい、何笑ってんだ」
『アハハ!!
コウ、全然そんなこと言うキャラじゃなくて笑笑
なんかぎこちなかったね笑笑』
コウ「……人が心配してんのに…クソ、やっぱあんなこと言うんじゃなかった」
私に背を向けるコウの耳は赤く、口元を隠していた。
『いや、怒んないで!笑…ありがとね、コウ!
なんかコウのおかげで元気出たや』
コウ「お前は俺で楽しんでるだろ…」
『そんなことない!コウ、元気出してこ!!』
コウ「なっ…誰のせいだと…!!」
『ほら~、早く狼裁判行かないと!』



今度は私がコウの手を引っ張って。
コウは私に引っ張られて。
二人の顔は教室に入った時とは打って変わって笑っていた。
これから起こることを忘れるかのように。




____そして、あなたの名字あなたはすっかり忘れている。

自分が最初に何を探していたのかを。






《Q.あなたの名字あなたは何を探していたでしょう!》

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