放課後の旧校舎の屋上は、
オレンジ色に染まっていた。
西日が目にしみて、風が少し冷たい。
柵にもたれていた司くんが、こちらを振り返った。
笑顔はいつも通りなのに、
呼び方が妙に真剣で、私は言われた通りに近づく。
すると、彼は私の手を掴んだ。
冷たい指が、ぎゅっと絡みつく。
逃がさないと言わんばかりに。
唐突なその言葉に、
思わず「なにそれ」と笑ってごまかそうとした。
でも、司くんは微笑まなかった。
金色の瞳は真っ直ぐで、どこか哀しげで、
そして____底の見えない何かを宿していた。
その言葉の重みを、
本気にするべきかどうか迷った。
でも、握られた手が熱いほど痛くて、
まるで焼き印みたいに心に残ってしまった。
頷けば終わりだとわかっているのに、
私はうっかり頷いてしまった。
___それが、彼と私を繋ぐ呪いになるとも知らずに
⸻
それからしばらくして、司くんは突然いなくなった。
誰も理由を知らない。教室にいたはずなのに、
まるで最初から存在しなかったみたいに
消えてしまった。
夜、私は旧校舎に足を踏み入れた。
あの日と同じ夕暮れの景色を探したけれど、
窓の外は真っ暗で、影が揺れていた。
____カタン、と物音がする。
声を震わせながら呼ぶと、
廊下の奥から小さな足音が近づいてくる。
聞き覚えのある声。
けれど、現れた彼は少し違った。
制服は血のように赤く染まり、
首筋には黒い紋が走っている。
金色の瞳は月光を吸い込んだみたいに冷たく輝き、
口元だけが楽しそうに笑っていた。
私が息を飲む間もなく、彼は手を伸ばし、
冷たい指で私の頬をなぞった。
その瞬間、足元から黒い影が広がり、
私の全身を飲み込む。
温かさも冷たさも、痛みさえもわからなくなる。
ただ、彼の声だけが耳に残った。
____あぁ、本当に。これで、離れられない。
でも、嬉しい、
そう言い残し、彼女の姿は暗闇に消えていった。

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!