第16話

【離れられない】
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2025/08/10 06:00 更新












  放課後の旧校舎の屋上は、
  オレンジ色に染まっていた。


  西日が目にしみて、風が少し冷たい。
  柵にもたれていた司くんが、こちらを振り返った。



















 司 
 司 
 ねぇ、こっちきて? 







  笑顔はいつも通りなのに、
  呼び方が妙に真剣で、私は言われた通りに近づく。


  すると、彼は私の手を掴んだ。
  冷たい指が、ぎゅっと絡みつく。
  逃がさないと言わんばかりに。






 司 
 司 
 俺が死んでも忘れちゃだめだよ、 







  唐突なその言葉に、
  思わず「なにそれ」と笑ってごまかそうとした。


  でも、司くんは微笑まなかった。
  金色の瞳は真っ直ぐで、どこか哀しげで、
  そして____底の見えない何かを宿していた。






 司 
 司 
 迎えに行くから。幽霊でも、怪異でも 
 何でもいい。君を僕だけのところに
 連れてくから







  その言葉の重みを、
  本気にするべきかどうか迷った。


  でも、握られた手が熱いほど痛くて、
  まるで焼き印みたいに心に残ってしまった。


  頷けば終わりだとわかっているのに、
  私はうっかり頷いてしまった。
 

  ___それが、彼と私を繋ぐ呪いになるとも知らずに
















 それからしばらくして、司くんは突然いなくなった。


 誰も理由を知らない。教室にいたはずなのに、
 まるで最初から存在しなかったみたいに
 消えてしまった。


 夜、私は旧校舎に足を踏み入れた。
 あの日と同じ夕暮れの景色を探したけれど、
 窓の外は真っ暗で、影が揺れていた。


 ____カタン、と物音がする。





あなた
 …司、くん? 






  声を震わせながら呼ぶと、
  廊下の奥から小さな足音が近づいてくる。






 司 
 司 
 やっと来てくれた 






  聞き覚えのある声。
  けれど、現れた彼は少し違った。

  制服は血のように赤く染まり、
  首筋には黒い紋が走っている。


  金色の瞳は月光を吸い込んだみたいに冷たく輝き、
  口元だけが楽しそうに笑っていた。






 司 
 司 
 ほら、言ったでしょ?迎えに行くって 





  私が息を飲む間もなく、彼は手を伸ばし、
  冷たい指で私の頬をなぞった。




 司 
 司 
 これでやっと、ずっと一緒だね 





  その瞬間、足元から黒い影が広がり、
  私の全身を飲み込む。


  温かさも冷たさも、痛みさえもわからなくなる。
  ただ、彼の声だけが耳に残った。


  ____あぁ、本当に。これで、離れられない。
  でも、嬉しい、





あなた
 好きだよ、司くん、 
 





  そう言い残し、彼女の姿は暗闇に消えていった。

















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