「大好きだよ」
「……好き、遊くん」
いつから、大好きだった彼女の愛の言葉は、
「いや…やめて」
「助けて」
俺を否定する言葉になったんだろう。
綺麗だった彼女の瞳は、
真っ黒で、
輝きがなくて、
汚いものになっていた。
大丈夫、それでも俺が愛してあげるから。
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事の始まりは、彼女の一言だった。
「もう、別れよう…」
「遊くん変わっちゃったよ…もうあの時の遊くんはいない。」
「別れたい…」
大好きだった彼女。
その彼女から別れを告げられた。
俺は彼女にいっぱい注いだ。
愛も、金も、時間も。
それを彼女は重いと言って、
俺のことを捨てようとしてきた。
俺は、その時。
自分のつけていたネックレスを、
彼女の首にかけた。
そして、グッッと力強くしめた。
「う゛…っ、ぁ゛…」
力なく抵抗する彼女。
そして、死にそうになる瞬間に手を緩める。
「っはぁ…っはぁ」
そして、また。
力強くしめる。
それを繰り返してるうちに弱っていった彼女を、
自宅へ運んだ。
生憎、俺の家には監禁部屋などはない。
だから、物置部屋に彼女を閉じ込めることにした。
愛がわからない彼女に、
俺が集中的にここで愛を注いでやろう。
投げるように彼女を、物置部屋にいれて、
途中で騒がれたら困るから、
口元にタオルを巻き付けた。
手を後ろでロープで縛り、
足を氷水に浸しておいた。
手がないと、この物置部屋から出ることは難しい。
仮に出られたとしても、
冷えて感覚がなくなった足で、
手が縛られた状態で、
前が見えなくなった状態で、
どう足掻いても出れるわけはない。
それでも、彼女が出ようとする姿を想像すると興奮した。
大丈夫、 愛がわからない君に。
俺がたっぷり愛を教えてあげるから。
こうして、俺と彼女の。
歪んだ関係ははじまった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!