第9話

9. 永遠に
984
2018/02/15 16:20







「……遊くん」









瞳は俺に微笑んだ。





__________今ならまだ間に合う。







「……瞳、病院へ行こう」







俺が瞳の手を掴むと、

瞳は俺の手を振りきった。








「……ダメだよ」








瞳は俯き呟いた。





……気づくのがおそすぎた。


気づいてたけど、後戻り出来ないところまで来ていた。



そうして進むうちに、

俺は取り返しのつかないところまで来ていた。








「今、病院行ってもきっと…後遺症残るもん」






「それでも……っ」







瞳を説得しようと思ったが、


全く俺に応じてはくれなかった。







「私達、……道を外れすぎたね」






苦笑する瞳。




瞳は何も悪くない。





目の前にボロボロになった瞳を見て、


俺だけが悪いと分かる。







「ねぇ、遊くん。もう1個。お願いを聞いて欲しいの」





「……何?」






「私を…遊くんが殺して」








……俺が、瞳を殺す?




冗談か何かと思って瞳の目をみると、

__________本気だった。






「っ…」





思わず言葉に詰まってしまう。






「……お願い…」






……ここまでしておいて、

瞳をここまで追い詰めておいて、

最期を頼まれると嫌がるなんて身勝手すぎる。





……結局は人殺しというレッテルを貼られたくないだけ。




……それに、彼女がこの世界でこうなって幸せに過ごせるとは思えない。









…俺は、この部屋に瞳を閉じ込めた。


逃げられないように、


俺のそばにずっといるように。



それなら俺は瞳を最期まで見届ける意味がある。






「……わかった」






俺が頷くと、

瞳は安心したような顔で笑った。








……俺が、彼女に最後の愛を与えよう。







プリ小説オーディオドラマ