カノジョside
「いか……ないでっ」
私の声は虚しく、
遊くんに届くことなく暗闇に溶けていった。
遊くん…。
でも、この状況は自業自得だった。
一方的に愛されることに優越感を感じ、
いい気になりすぎた。
元は私の方が重かった。
遊くんの後をひたすらついて行き、
すぐ嫉妬して。
そんな私を友達が
『重い女は彼氏にフラれるよ』
と咎めてきた。
私はフラれるのが嫌で、
嫌われるのが嫌で、
少し遊くんへの愛の重さを抑え、我慢した。
そしたら、遊くんが私と変わるように重くなっていった。
正直、嬉しくて、
私は愛されてる。という感覚に浸ってた。
__________問題はここからだった。
遊くんの愛がどんどん重くなっていき、
優越感に浸っていられる状況じゃなくなっていった。
このままではまずいことになる。
そう思って、全てリセットしようとした。
遊くんに一度別れを告げ、
落ち着きを取り戻してもらおうと考えた。
でも、甘かった。
私を溺愛してる彼に別れを告げることは、
火に油を注ぐことだって、
なんで気づかなかったのだろう。
「遊…くん…」
足の感覚がなくなってくる。
このまま足に血が通わず、
数時間放置されてたら、
私はもうこの世にはいられないだろう。
_____生きていられたとしても後遺症が残る。
本当は彼を恨むべきなんだと思う。
……だけど、恨めなかった。
__________自業自得だから。
__________まだ彼を愛しているから。
もし、私が死ぬとなれば。
彼は私の最期の願いを叶えてくれるのだろうか。
叶えられない難しい願いじゃない。
__________私の名前を呼んでほしい。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。