壱子は
たまに夢を見る
ずっと
同じ夢
お父さんと
お母さん
大切な時間を
ある女が
真っ赤にする
そんな
残酷な夢
***
紅葉はどんな時も
ハキハキした母だ
今までの
思い出が
溢れかえる
ようだった
仲良く
手を繋いで
紅葉は机の上のマグカップを見つめた
そういえば……
このコーヒーの匂い
お母さん____________
壱子は泣いてなんていない
紅葉は驚いた
それは
想像していた言葉とは
かけ離れていたから
なんで
気づかなかったんだ
言ってくれたのに
____________大切にしたい
壱子は
居ても立っても居られず
リビングから
飛び出そうとして
なにかにぶつかった
大和は壱子の顔を見なかった
大和は黙ってうなずいた
大和は手に持っていた
チケットをグチャっと握った
そういう壱子の姿は
18歳だった頃の壱子ままだった
壱子は、玄関を開けて走り出した
あの頃より少し伸びた髪を揺らして
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。