第6話

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2021/01/10 07:26
壱子が喫茶店「つつじ」で
働くようになってから
数週間が経った


藍の淹れるコーヒーは
ちまたで評判を呼び

小さな町のさびれた喫茶店にしては
珍しいことに満席になる日も少なくない
藍は店の鍵をめると
壱子の方を向いた
_藍@あい_
あい
じゃ、行くか
_壱子@いちこ_
壱子いちこ
え?
藍は壱子の反応をうかがうことなく
ヘルメットを渡した
_藍@あい_
あい
デート、行くんだろ?
_壱子@いちこ_
壱子いちこ
行く!
壱子は
無防備な藍の後ろから飛びついて
顔をのぞき込んだ

_藍@あい_
あい
ヘルメットちゃんとして
藍は壱子にヘルメットを被せ
最後にコンと
ヘルメットを軽く叩いた
_壱子@いちこ_
壱子いちこ
どこ行くの?
バイクはエンジンを掛けて走り出す



風、
かすかなタバコと
コーヒーの匂い



この瞬間を切り取るように
壱子は息を止めて噛み締めた


_藍@あい_
あい
ナイショ

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