第7話
6
隣町のショッピングセンター
藍と壱子は
ガラガラの映画館で
ハリウッド映画を観た
藍はクレープを壱子に手渡す
藍から差し出された
食べかけのクレープに口をつける
甘い
クレープの
甘さは
壱子の好きな
いちごとは
対照的に感じられた
壱子も自分のクレープを差し出す
藍がそう言うことを
壱子は知っていた
昔から
藍は
いちごが嫌いだ
壱子は大きな口でクレープを頬張った
藍と壱子の座るベンチの前で
数人から1人だけ取り残されたように
男子が立ち止まった
大和のストレートな言葉に
壱子は
わざと藍にくっついてみせた
そういって藍は
壱子のクレープを一口食べた
壱子は目を丸くして藍の顔を見る
大和は壱子の方を向いてそういうと、
藍に会釈して友人の後を追った
藍は口元に笑いを浮かべた
藍と壱子は
空いた
数年間を
埋めるように
近づく
藍は壱子の
口についたクリームを
そっと指でなぞる
藍の顔が近い
切長の目が壱子を離さない
壱子の唇に
優しく柔らかい
藍の唇がつく
壱子は、
藍が急に
艶やかしく見えて
高揚した