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第1話

( 1 )
なつ
なつ
帰ってきてよ・・・何で置いていったの。
彼女の言葉は音楽と共に消えていく。
そら
そら
なつ?歌始まってるけど・・・
なつ
なつ
あ、ごめん。ちょっと考え事してた。
そら
そら
・・・こうのこと考えてたのか?
核心をつくそらの言葉になつはドキッとした。
何も考えなくても涙が溢れてくる。
そら
そら
・・・ごめん。なつ、今日はもう帰ったほうがいいんじゃないのか?
その言葉になつは重力に任せてうなずいた。
そらは何も言わずベースを置き、なつの荷物を取る。
放心したままのなつを少し見たそらは自分の荷物も取り、ベースを片付けてケースを背負った。
そら
そら
悪い。今日俺となつが早退したと部長に言っといてくれ。
男子部員
男子部員
そらまで帰ることないんじゃないのか?
女子部員
女子部員
・・・ううん、なつちゃん一人で帰すのは心配よ。加奈山くんに送って貰った方がいいわ。
男子部員
男子部員
・・・それもそうか。気をつけて帰れよ。
そら
そら
悪いな。なつ行くぞ。
なつ
なつ
・・・うん。
心配そうな同級生を後目に彼等は部室をあとにした。ふたりが自転車で駆け下る桜坂の並木は秋を告げるように紅葉を撒き散らしていた。