冷たい風が頬をなでて、

あのなんとも言えない苦手なクラブの空気から

開放された。


だからなのか、ドッと疲れが出てきた。

ヨンジュニ、

ヨンジュニ。




まるで覚えたての言葉を繰り返す

赤ちゃんみたいにそういう。

　






タクシーの車窓を眺めながら

あなたちゃんはそう言った。




窓に映るあなたちゃんは

本当にきれいで

ボムギュの友達としては100点満点の顔だろう。

未だ握られている手。

離したらまたフラ、といなくなりそうだから、

離せない手。

振り返ったあなたちゃんは

ふわりと笑って首を傾げている。



そうやってふわふわしてるのに

お酒をかけちゃうところとか、




ギャップ萌え、と言うやつは

コレのことなんだろうか。

素直にそう言えば、

固まった顔をするあなたちゃん。

それから口を閉じて

また車窓を眺め始めたあなたちゃん。

俺が住所を聞けば

ヨンジュ二と同じところで降ります。
近くです。

なんて言うから何も言わなかったけど、。

え、？

え、そんなフラフラで駅まで歩くの？

チラリ、とスマホを見ると

液晶に表示される数字たち。

ぱちくりと瞬きをして、

口を小さく開けるあなたちゃん。





酔ってるね、完全に。

くる、と俺に背中を向けたけど

道路にはもうタクシーのタの字もない。

なんで声を小さくして言うの？

なんて少しからかってみれば

お酒が原因で赤くなってる顔が

さらに赤くなった気がした。









照れてるんだ、。

何かを考えてるのか

それとも脳内で俺の言葉を処理してるのか

少し難しい顔をするあなたちゃん。








はっきり言わないと、駄目か。








俺は繋がれた小さなあなたちゃんの手を

優しく、壊さないように、熱を分けるように

キュ、と握った。