姫星「雨だ」
春「最悪」
結真「...」
結夢「雨、」
放課後、4人で帰ろうと昇降口を出たら雨がザーザー降っていた。
今日の予報は雨だったけど、こんなに降ると思わなかった。
雨の中走って行く人もいれば、傘を2人で指す人もいる。
春「俺傘無いんだけどー!」
高梨くんが空に向かって叫んだ。
姫星「私持ってるー」
姫星が自慢するように高梨くんに傘を見せた。
姫星の可愛い折りたたみ傘。
春「うわ、マウント!」
姫星「はいはい、行こー!」
姫星が傘を開いて外に出る。
春「入れてよ!俺風邪ひいちゃうじゃん」
高梨くんが姫星の傘の中に入る。
姫星「あはは!」
春「ちょっと狭いんだけど」
姫星「文句言うな」
2人が楽しそうに歩いて行く。
白狼くんは傘を持っているだろうか。
私はビニール傘を開いて外に出た。
結夢「白狼くん、行こ」
後ろを振り返ると、白狼くんが私の傘の中に入ってきた。
白狼くんは私から傘を取って、持ってくれた。
結夢「傘忘れたの?」
白狼くんはクールな顔で首を横に振る。
私の頭にはてなマークが浮かぶ。
持っているのになんで。
結真「2人で傘さしたいって顔してたから」
白狼くんは私のほっぺを片手でむにっとして笑った。
結夢「そんな顔してない、」
私は恥ずかしくなってぱっと目を逸らす。
結真「顔赤いぞ」
白狼くんは私の顔をのぞきこんで言った。
結夢「うるさいうるさい」
私はほっぺに手を当てて少し早く歩く。
結真「濡れる」
白狼くんは私のリュックをぐいっと引っ張ってから、肩に手を回した。
こんな恥ずかしいこと、サラッとできちゃう白狼くんはずるい。
私ばっかりドキドキしてる。
結夢「ずるい」
結真「あ?」
白狼くんは不良みたいに聞き返す。
結夢「ふふ」
私はおもしろくて笑う。
結真「んだよ、全然聞こえねえ」
雨の音に負けじと私は大きめの声で話す。
結夢「白狼くんはずるい!」
白狼くんはあからさまに嫌な顔をしている。
結真「は?なにがだよ」
結夢「私ばっかりドキドキしてる」
白狼くんは少し黙ってから私を見た。
結真「お前からキスしてきたら、俺はドキドキするんじゃね?」
白狼くんはニヤッと笑った。
できるならやってみろって顔。
結夢「できるわけないじゃん」
結真「じゃあ俺はお前にドキドキしない」
なにそれ。
いつも余裕そうな白狼くんの顔を赤くしてみたい。
私は白狼くんのネクタイをぐいっと引っ張る。
白狼くんの顔を私に近づける。
私はそのまま白狼くんのほっぺにキスをする。
口にはできないけど、ほっぺなら。
結夢「ドキドキした?」
私は照れ笑いをしながら白狼くんの顔をのぞき込む。
白狼くんは私がキスした頬に手を当てながらそっぽを向いた。
これは照れてるな。
私はニシシと笑う。
結真「何笑ってんだバカ」
白狼くんは私の頭を優しくポンとする。
白狼くんのこと、もっとドキドキさせてやる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。