第35話

私のわがまま
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2021/11/28 04:41

姫星「結夢ー!お昼食べよ!」


姫星と高梨くんがお弁当を持って私の席に来た。


いつもの3人でのお昼。


結夢「私、白狼くんと食べようかな」


私が控えめに言う。


姫星「2人で食べてくる?」


春「3人でも大丈夫だよ?」


結夢「ううん!私白狼くんと食べたい」


私が2人に気を使ったのも、実は白狼くんと食べたいのも本当のこと。


白狼くんと2人でお昼を食べたことがない。


学校では、いつも3人で食べてて、白狼くんは1人がいいって混ざろうとしなかった。


姫星「おけ!いってらっしゃい」


姫星が笑顔で手を振る。


私も手を振り返して、トコトコと教室から出ていく。


一緒に食べたいけど、白狼くんは1人がいいよね。



白狼くんはひとりでいるのが好きだから、無理言って一緒にいてもらうのも申し訳ない。


少しだけ、白狼くんのクラスを覗いてみよう。


結夢「...」


ひょこっと白狼くんのクラスを覗くと、クラスの人に囲まれていた。


いつものクールな顔で話をしている。


クラスが違うと雰囲気も違う。


入りにくいな。


やっぱり今日は1人で食べよう。


男子生徒1「どーしたの?うちのクラスに用事?」



屋上に向かおうと考えていたら、白狼くんのクラスメイトに声をかけられた。


結夢「あ、いや、なんでもないです」


何故か敬語でペコペコする。


男子生徒2「ん、結夢ちゃんじゃん、結真の彼女の」


男子生徒1「ほんとだ、ひつじちゃんだ!」


男子生徒は笑顔で私を見る。


男子生徒2「結真に用事だろ?今呼んでくるから」


結夢「あ!ほんとに大丈夫なので!」


きっと迷惑だ。


あの雰囲気に私が入っていけない。


クラスの子と話すようになった白狼くんを邪魔できない。



ガチャ



結夢「屋上、久しぶりだ」



前は針金で開け閉めしていたけど、白狼くんが仲のいい若い男の先生に鍵をもらって、それからずっと鍵を使っている。


どうやって鍵をもらったんだろう。


脅したのかな。


私と白狼くんしか持っていない屋上の鍵。


今日はここで食べよう。


隅っこの壁にもたれかかって座る。


ここは思い出の場所。


2人だけの場所。


最近は屋上にも来なくなった。


白狼くんがクラスに溶け込み始めてからは、白狼くんもクラスにいることが多くなった。


クラスに溶け込めたのは嬉しいけど、ホントはすごく寂しい。


前みたいに、"屋上"の2文字のLINEが欲しい。


"屋上"のLINEは、屋上に来いって意味。


毎日待ってるんだよ。


"屋上"ってLINE。


涙が出てきて、私は誤魔化すようにお弁当を食べる。


寂しくて不安な気持ちでいっぱいになって、涙が止まらない。


ガチャ


ドアが開く音がして顔をあげると、白狼くんがコンビニ袋を持って立っていた。


私はぱっと目を逸らしてまた下を向く。


お弁当を床に置いてスカートを握る。


結真「お前さ、」


白狼くんは私に近づいてきて私の前に立った。


私は涙が止まんなくて、下を向いたまま頷く。


結真「ッチ」


白狼くんの舌打ち。


怒ってる。


結夢「っ」


白狼くんは私の顔をぐっと上にあげる。


目が合う。


結真「お前さ、なんで俺に気使ってんだよ!」


白狼くんにはじめて怒られてまた涙が出る。


結夢「っ、うぅ」


涙がボロボロ零れてくる。


震える手で白狼くんの手首を握る。


結真「言いたいことあんなら言え、我慢すんな、少しはわがまま言えよ」


我慢してた。


寂しかった。


結真「俺気持ち察するとか器用なことできない」


白狼くんの真剣な目。


結夢「さびしがっだぁ」


私は小さい子みたいに泣きながら白狼くんに言う。


結夢「っ、クラスの子と、話す、白狼くんのこと、じ、邪魔しちゃ、だめって、」


結夢「ほんとは、2人きりになりた、くて、クラスの子よりも、わたし、優先してほしくて、っ、」


結夢「屋上、で、前みたいに、2人きりで、いたいの、」


結夢「ずっと、我慢してた、寂しくて、不安だった、」


結夢「し、ろかみ、くんが私のこと好きじゃなくなった、ら、どうしようって、」


私の本音が溢れる。


涙が止まんなくて、顔もぐちゃぐちゃ。


白狼くんは私の顔を両手で包んだまま、黙って聞いてくれた。


結真「ごめんな」


白狼くんは寂しそうに言った。


結真「ずっと我慢させて、不安にさせてごめんな」


結真「お前のこともっと考えてやれば、よかった」


白狼くんは眉毛を下げて言った。


結夢「ぎゅーって、して、」


私のわがままを言う。


白狼くんは頷いて私を強く抱き締めた。


結真「結夢のこと、嫌いになるわけないだろ」


結夢「うん、」


結真「好きだよ結夢」


結夢「っ、、」

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