あれからかなり時間がたったと思う。けど俺達はまだ森の中を彷徨っていた。
俺は全然大丈夫だけどみんなの体力はもう限界に近いみたい。これはやばい...。
やばいやばいやばい!このままだと帰ることになる!
だったら...。できるか分からないけど...。
目一杯息を吸い込んで...。
俺は森全体に響き渡るように遠吠えをした。できるか不安だったけどなんとか行けた。
騒ぐ菜瑠を黙らせる。みんな不思議そうだけど俺に合わせてくれた。
ピョコっと狼の耳を出す。するとかすかに葉っぱを踏んでいる音が聞こえてきた。そしてこの匂いは...。
俺が指さした先から出てきたのは一頭のデカイ狼。
俺はこの狼をよく知っている。俺の親父だ。向こうも俺が分かったようでとても驚いている。
心配してたけどまだ言葉は分かるみたいだ。みんなには吠えてるようにしか聞こえないだろうけどな。
みんなは驚いているのか口をパクパクさせている。
あれ?でも親父一人なのはおかしいな...。
親父が言った瞬間に後ろから音がして数匹の仲間達が姿を表した。
おばば様含め、みんなも元気そう。良かった...。さてと、そろそろ本題にうつろうかな?
さっすが親父。察しがいい。
2人も察してくれてどっかに行ってしまった。楓は困惑してるけどなw。
戸惑う楓を手招きする。そしたら楓はためらいながらもこっちに来てくれた。
楓は軽く頭を下げる。
俺が高らかに宣言すると楓は顔を真っ赤にして声を上げた。
あ、そっか。楓には分からないのか。
またもや照れ始める楓。マジでかわいい〜!
俺は親父やみんなにこれまでのことを話した。話終わった頃には気づけば日が傾いていた。
俺と楓は2人で歩き出した。ふと周りを見るとカエデの葉が宙を舞っていた。
その景色があまりには楓と出会ったときに似ていて俺は少し、懐かしかったんだ。
次に来る時はまたしんてんしてからだな!
俺は楓と出会ったこの故郷に精一杯の感謝と二度目の別れを告げた。楓の隣で_。
ーENDー
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。