すぅっとお嬢様が息を吸った
それだけでこの場の空気が引き締まる
少し怯えの含む視線で彼は私を見る
そういったときパチュリー様だけでなくお嬢様も顔を顰めたのはなぜだろうか?
困惑したような表情で聞く彼に
能力というものを教えていなかったことに気づく
不思議に思っていたため丁度いい
そう思い彼らに個性というものについて聞くことにした
水晶から少し息を呑む音が聞こえた
私だけでなくお嬢様たちも驚いているようだ
それもそうか
能力は8割なんて多くの人に与えられない
人間で能力を持てる割合は2割程度だろうか。
天然の能力だとこれくらいだが魔理沙のような
後から発現した能力持ちもいる。
しかしそれを含めてもせいぜい3割がいいところだろう
やはり住むところが違えば色々と変わるものらしい
彼女の力はこちらの人間から見れば
人1人が持つには大きすぎる力だ。
出久もそれに当然の如く気づき絶句した
ただでさえ明らかにこちらの常識を超えた事実にオールマイトは目を見開き
出久はそれを理解することに時間を要した
彼の頭はその事実を受け急速に回転し出した
彼は時間操作に似たような能力を思い出そうとしていたが
その思考は割り込んできた声に止められた
改めて聞くと本当にとんでもない能力ね
緑髪の人間はまだ理解が及んでいないようで首を傾げているが
ガリガリの人間は説明を聞いて理解できたのか顔を真っ青にしていた
その説明でようやく意味がわかったのか目を見開き真っ青になる緑髪の人間
その様子にお嬢様はため息をつき
「私も能力に自信を持っているけれどこいつには大概呆れるわ」
と本当に呆れたと言うように言い捨てた
ばばんっと胸を張って宣言するお嬢様だが
表現が抽象的すぎるせいかよく伝わっていないみたいだ
それでもガリガリは慎重な表情で尋ねた
そうクスクスと笑い今まで見てきたおもちゃの感想を言うよう言葉を紡いだお嬢様に
緑髪の人間は「そんなのおかしい!!」と叫んだ
、、、、下手な正義感はその身を滅ぼすことを知らないのだろうか
今頼るべき人間にこいつが含まれていなければすぐに八つ裂きにしたと言うのに
それだけお嬢様を否定した罪は重い
そんな私の心を見通したようにお嬢様は私を諭した
はぁ、、、
とため息をつき一度心を落ち着かせる
言外にこれ以上不躾な真似をすれば貴方を倒すことも厭わないことを
仄めかせると彼は途端にハッとし私とお嬢様に謝った
、、、、根は真面目な人間なのかしらね
霊力という言葉を聞いてあからさまに首を傾げた彼らに説明すると
一瞬緑髪の人間の顔が輝くも自分が霊力を使えないと分かった瞬間に肩を落とした
話が一段落し目の前の人間達がなぜか戸惑っていると不意にパチュリー様の声が聞こえた
確かに右も左もわからないことだらけではあるが
なぜ初対面の彼にそこまでのことを頼むのでしょうか?
パチュリー様はそんな早くに人間を信用するような性格ではなかったはずなのだけれど、、、?
心変わりなされたのかしら?
聞きなれない言葉に首を傾げる
パチュリー様もお嬢様も
どうやらわかっていなさそうだ
突如として割り込んできた声にお嬢様とパチュリー様は同時に顔を顰めた
、、、ご友人ですから息も合うものですのね
そんな感想が密かに浮かぶも
今自分の中に浮かんでいる感情で一番強いのは不信感であり
少なからず自分の表情も芳しくないものになっているのが察せられる
紫からの支援はありがたいがいかんせん
いつもの胡散臭いイメージがつきすぎていて
何か裏があるんじゃないかと思ってしまう
そういい水晶に視線を向けると八雲がほんの少しだが
困ったようにお嬢様がいると思われる方向に視線を向けた
暫くの沈黙と共にため息と
「パチェ」
とパチュリー様を呼ぶお嬢様の声が聞こえた
パチュリー様はお嬢様が声をかけた意図を理解したのか深いため息と気だるげな声で
「わかったわよ」
と告げた
その後水晶の向こうから一切の音が消えた
パチュリー様が魔法を使ったのだろうか
、、、でもなんのために?
それから1分くらい経っただろうか?
カタリというほんの僅かな物音と共にお嬢様が水晶の前に現れた
お嬢様の声は今まで聞いた中で一等刺々しい。
聞いたもの全員が縮み上がるような威圧感を含んでいた
八雲の声もお嬢様の声に負けず威圧感を含んでいる
いつもの軽薄そうな声色は感じられずただただ
「恐怖」
その感情に支配された
、、、、彼女はやはり大妖怪だ。
私達はオールマイトに礼を言い
その場をあとにした
緑谷家
少々混乱しているような彼女に、
彼はは先程起こったことを道中でお嬢様達から
話していいと言われたところまで簡潔に説明した
驚きで目を見開き
次の瞬間には彼女の視線に一気に不信感が募った
流石に難しいのでしょうか、、、、
これで食と住は手に入れることができたわ
後は衣だけれどこれはなんとかなりそうね
何事もなく終わればいいのだけれどね
パキンッと運命の歯車が壊れる音がした
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。