第55話

第3話
183
2022/01/30 02:20
ギュッ
高槻彰良
.......!?
彰良は尚哉に抱き締められていた。
鍛練を続けていたからか、抱き締める力と、肌触りが変わっているように感じる。
その力は、人間の頃の彰良を超えていた。
深町尚哉
先生...高槻先生はいつも無茶ばっかり
しますよね?...それに、何事もなかったかのようにずっと笑っているし。
高槻彰良
そっ...それは.......
深町尚哉
笑っていれば、何とかなると
思っているんですか?
高槻彰良
.......分からない。
でも、何故かそうしちゃうんだ。
無意識に出てしまうと言うか、その...
深町尚哉
誰にも心配かけさせないように
するためですか?
尚哉の言葉に彰良の体がピクリと動く。
高槻彰良
......そう...なのかもしれない。
彰良は俯き、体の重さを委ねる。
高槻彰良
..............ごめんなさい。
そう謝った。許しなんて求めてない。
ただ、こんな事になってしまったのは、自分のせいだと伝えたかった。
深町尚哉
謝れば済むと思っているんですか?
.....済むわけないでしょう。
ギシッ
抱く力が、締め付けられるほど強くなる。
高槻彰良
ッ...
一瞬だったが、重い痛みを感じた。
深町尚哉
今回の出来事に、先生は関係ない。
先生は俺を庇っただけだから。
高槻彰良
でも...言い出しっぺは僕だ。
深町尚哉
車に引かれて、
ここへ来たのはマグレです。
鬼の全ての元凶に襲われそうに
なったのは...俺です。
深町尚哉
それを庇ったのは先生。
俺は先生を助ける事しか考えてない。
高槻彰良
.....深まっ...
深町尚哉
先生だけが苦しむ必要はない。
先生だけが背負う必要はない。
深町尚哉
...先生が何か抱え込んでいるのなら
俺が苦しくなりますよ?
「そんな事できない」と、彰良は言おうとするが、尚哉がそれを被せるように、優しく言った。
高槻彰良
.....それは...駄目だね。
君を苦しめるのは...死んでも嫌だなぁ。
深町尚哉
でしょう?......だから...
ふふ、と笑い、尚哉が耳元で言う。
深町尚哉
守られて下さい。守らせて下さい。

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