私は咥えたアイスを少し押し出す。半分ほど減ったカルピス味のアイスが喉を通る。まあしかしこの暑さに勝てる訳もなく、直ぐに次の1口を欲す。
ね「なんとなくだよ。男女一緒に歩いてるとカップルって偏見押し付けられるじゃん。なんなんだろうね。」
そう淡々と述べるねぎくん。まあそうだろう。人の恋路に興味を惹かれるが人の性。ましてや私たちは高校生。思春期だ。そう思ってしまっても無理ないだろう。
実際先程私は追い越した男女2人がカップルだと勝手に決めつけた。知り合っているカップルっていうわけでもないのに。
『まあ、ね。そう思いたいならそう思ってればいいよ。他人の印象なんてコロコロ変わるんだから。』
そう呟いて私はアイスを食べ切る。
遠くの方を見つめたねぎくんは空になった容器に空気を入れ、口を開いた。
ね「もう俺たち付き合っちゃえばいんじゃね?」
流石に今回は吹いた。口の中にアイスは残っていなかったものの気管に唾が入り激しく噎せ込む。
そんな私の様子を見て楽しそうに笑うねぎくん。
くっそこのサイコパスめ…。と私は心の中で1回ねぎくんを殴る。
『はぁ!?あんた何言ってんの!?付き合うとか…はあ!? 』
完全に語彙力を失った私を見て更にねぎくんは笑う。そんなねぎくんに今度は実際に軽く1発蹴りを入れる。
ね「ごめんごめんww冗談だよwwwこんなに取り乱すとはww」
私は息を整えさっきよりも熱を持った頬を押さえる。
付き合うなんてありえないじゃん
口から出るはずだった言葉は喉の奥でつかえて出てくることはなかった。
そうこうしているうちに学校が見えてきた。
さっきの言葉が頭に残りねぎくんと朝登校する。ということに恥ずかしさを覚える。同じ学校の生徒達も増えてきて私たちに向けられる視線が刺さる。
ふ、とねぎくんの方を見る。と、たまたま目が合った。
私は反射的に目を逸らしてしまう。何故だか心臓の音が煩い。熱が出たかのように顔が熱い。
この症状はいったい何か?
私たちは校門をくぐった。
ーそれは最後にこの門をくぐる時に理解することになる。
end
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。