そこからは男の子の家まで送ってあげることにした。もう日もだいぶ沈んできており。小さな男の子1人だと不安があったからだ。
オレンジ色に染まった街を2人で歩く。
男「…お姉ちゃんのぶれすれっときれいだね」
帰り道に急にそんなことを言われた。男の子が指さした先には右手首にはめられたブレスレットがあった。
『あぁ、これ?…いいでしょー。お姉さんのお気に入りなんだー。』
そう言って男の子に右手首を見せてやる。
男「おきにいり…?」
『うん…そうだよ。お姉さんの大切な人から貰った、大事なものなんだー。嬉しくて嬉しくって毎日付けてるの!』
明るく言っては見たものの、ねぎくんの事を考えると底の見えないような不安の波が襲ってくる。
男「そっかー。じゃあその人はお姉ちゃんの事がすっごい好きなんだね!」
男の子が言ったその言葉に私はハッとした。
そうだ。ねぎくんがまだ私の事を嫌いになったなんていう確証はないんだ。しっかり向き合ってやらないとねぎくんの気持ちは解からないんだ。
ありがとう。私は君に救われたよ。もう少し頑張ってみる。
『うん!お姉さんもその人の事大好きなんだ。』
なんだか目頭が熱くなってきた。私は鼻をすすり男の子に笑顔を送った。
そのまましばらく住宅街を歩いていると
男「ここだよ!僕のおうち!!」
そう言うと男の子はクリーム色の壁の家を指さした。
『もう1人で大丈夫?』
私はしゃがんで男の子と同じ目線まで腰を落とす。そうすると男の子は大きく頷いた。
それを確認した私は少し男の子から離れて手を振る。
『じゃあね。次誰かが転んだらその絆創膏で助けてあげるんだよ。』
そんな意味のわからないセリフを言うと。男の子は笑顔で親指をたて、そのまま家の中へ消えていった。
最後まで見送った私は急いで携帯を取り出す。
ロック画面には頭の可笑しい状態の私とねぎくんが映っていた。
昔は画面を開く度に吹き出していたが、今となってはもう慣れたものだ。
ロックを解除し、LINEをチェックする。
…当たり前だか通知がたくさん来ていた。
私はすぐねぎくんに電話を掛ける。
トゥルルルルルル…トゥルルルルルル…
無機質なコール音が不安を煽る
ね「もしもし?」
…繋がった。
『ごめん、ねぎくん。今から家に帰る―
ね「どこに帰るって?」
私の言葉を遮ったのは―
後ろから飛んできたねぎくんの声だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。