お椀に移されたトロトロのお粥をスプーンで掬う。元々少し冷まされているお粥はそのまま私の口まで運ばれる
ね「はい。あー」
口に運ばれたお粥をもぐもぐと咀嚼する。
美味しい。正直食欲は全く無かったのだがこれであれば食べる事ができるだろう。
次の1口が運ばれてきて、口に含む。
頼んだのは紛れもない私なのだがこの状況、少々小っ恥ずかしい。
私にも少女漫画を読んでこういう状況に憧れていた時期があったかもしれない。
しかし実際自分がその世界の主人公になってみるとこんなにも恥ずかしいものなのだと痛感した。
最後の1口を食べ終え薬を手に取る。よくある「薬が苦手で飲めない///飲ませて?」なんて事もなくすんなり錠剤を流し込み再び体を倒す。
食器を流しに置き戻ってきたねぎくんと目が合う。
ね「薬飲めた?」
『うん』
水分を得たことにより声が出しやすくなった私はそう受け答える。
ね「大丈夫そう?」
ねぎくんのその問いかけに言葉が詰まった。
確かにさっきより楽だし実際割と大丈夫だ。ねぎくんにあまり心配をかけたくないしここは「うん」と答えるのが正解であろう。
しかしそう答えてしまった後ねぎくんは私から離れて行ってしまうのではないかと考えてしまい不安の波がブワッと押し寄せる。
『ううん…』
結果私の口からは正反対のものが飛び出した。迷惑をかけてしまったと落胆する。
しかし意に反してねぎくんは笑みを浮かべた。
ね「よし!じゃあ昼寝しよ!」
そう言ってねぎくんは私の横に寝転がった。未だに頭の上にクエスチョンマークを浮かべる私の髪を撫した。
ね「寂しかったんでしょ?添い寝してあげるから早く寝て早く元気になって?」
その言葉で我慢していた訳でもない涙が溢れ出した
『うぅ…あ"り"がどぉぉぉぉ』
ねぎくんは私の溢れた涙を優しく掬った。
ね「おーおー泣くな泣くなブスだぞ」
本来ならイラッときて言い返しているであろう言葉だが今回の場合は宥めてくれているのだろう。口調が優しい。
柔らかな笑顔に包まれ泣き疲れた私は直ぐに夢の中へと誘われた。
その間ずっとねぎくんは傍にいて頭を撫でてくれていた。
私はねぎくんの恋人でいれることを幸せに思った。
この幸せが永く続きますように。そう願った私の熱は夢の中へ溶けて消えてしまった。
end
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!