どれほどの時間が経ったのだろうか。
子供に帰宅を促すチャイムが鳴り響く。
それを合図にして今まで遊びに徹していた子供たちが、一斉に出口目掛けて走っていった。
しかし青いコートを纏った小さな男の子が躓いたのか出口付近で派手に転んでしまっていた。
勿論その男の子は大声で泣き始める訳で。
他の子たちはもう既に帰ってしまい、この公園には私と男の子しかいなかった。
私の体は考えるよりも先に動いていた。
『大丈夫?』
そう声をかけると男の子は赤い目を擦りながら、首を横に振った。
まあ、そうだろう。大分と派手に転んでしまったんだ。無理もない。
『どこ怪我しちゃった?ちょっとお姉さんに見せてみて?』
男の子の怪我の処置をすべく、そう優しく聞いてみた。
…にしてもお姉さんだなんて自分から言うのは恥ずかしいものだ。
男の子は震える手で左側の膝を指さす。
…見たところそれほど酷い怪我でも無いようだ。しかし傷口には砂がこびり付いてしまっている。
『うーん…取り敢えず傷口は洗った方がいいかな?』
私がそう呟くと、男の子は嫌だ嫌だと涙を零しながら首を振る。
私も昔痛みが怖くて、傷口を洗うのは大っっ嫌いだった。
でもいつもねぎくんが
ね「俺の手握ってていいから。」
って言ってくれて痛みが半減したのをよく覚えている。
あの時、とても嬉しかった。今のねぎくんは真顔で傷口に塩塗りそうだけど←
『お姉さんの手思いっっっっきり握ってて良いよ。痕がつくくらい。』
そうやって微笑んで手を差し出すと男の子は少し泣き止んで私の手をギュッと握ってきた。
『じゃあちょっとだけ洗ってもいい?痛かったらお姉さん叩いてもいいから。』
首をこてんと傾げてやると、男の子は戸惑いを見せたが弱々しく頷いてくれた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。