始発電車に乗る頃には雨が降っていた
傘は傘立てに置きっぱなし
もう亮ちゃんはいない
「もしもし?ほく?うん、もう着くから」
兄に電話をして
建物から出る
途端に雨は私を攻撃するんだ
でも今日は味方でいてくれるみたい
泣き顔が上手に隠れるもん
北斗「お前びしょびしょじゃん」
「ごめんなさい。あのね、私、もうわかんないよ」
差し出された傘の中に入り
目の前のほくのマンションに入る
北斗「俺が出張中は自由に使っていいから。とりあえず風呂入ってこい」
ぽいっとお風呂に入れられて
お風呂のお湯が温かくてまた泣いた
北斗「樹からだいたい聞いたけど」
温かいミルクが入ったコップが出される
北斗「俺も樹と同じ意見」
自分は冷蔵庫に体を預けて飲み物をすする
「もし、私のせいで仲悪くなっちゃったら?家族がいなくなっちゃったら?私みたいになっちゃうんじゃないかな」
北斗「お前ごときがその人の周りの人間関係壊せると思うなよ。もし壊れてもあなたがいてやればいいじゃん」
ほくと話をしていたらストンと心の穴が塞がった
それと同時に気持ちが溢れた
「ねぇほく、私、蓮と恋人になりたかった」
言葉に出すとさらに実感する
彼が好き。大好きだと
泣きながらほくに抱きついた
北斗「ほんっとあなたってなんでこんな不器用かね」
優しい兄の胸で沢山泣いて夜が明けた
この町のどこかで
また彼に会えた時は
素直な私で会えますように・・・。
「石 鹸。」 ……To be continued
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!