第8話

スングァンの大切なスウェット
609
2021/01/22 08:24
スングァン
ねぇ、ねぇねぇあなた、これみてよー。
あなた
ん?
リビングで、マンネくんのシャツの、取れたボタンを縫い付けていると、スングァンの声。

薄い緑色のスウェットを広げて見せながら、泣きそうな顔をして悲鳴を上げている。
あなた
なに、どうしたの?
スングァン
ボノニにスウェット貸したんだけど、ここみて、ここ。ケチャップかなんかついてる。
あなた
あ、本当だ。
スングァン
洗濯しても落ちてないんだよ。まじで、ありえないわー。ねぇ?
あなた
何食べたんだろうね。
スングァン
人に借りた服着てさー。ほんと、ありえない。
唇を尖らせてブツブツと文句を言うスングァン。

丁度部屋から、バーノンが出てきて。横目でチラッとスングァンを見て、すぐにスマホに目を戻してから私の隣にドシンと座る。
バーノン
スングァンまだ言ってんの?
スングァン
は?あなた、聞いた今の?これだよこれ、反省しないの、こいつ。
バーノン
ごめんって。ほんと、スングァンお前、大袈裟だよ。
スングァン
はー、まじで。
バーノン
ただのスウェットで…
スングァン
はい。まじで、もう貸さない。
バーノン
いいよ、なんか小さかったし。
スングァン
はぁ、まじ。
スングァンは、呆れたようにバーノンを見ると、首を垂らしてトボトボと部屋に戻る。

バーノンは、すでに携帯ゲームを始めており気に留める様子もない。
バーノン
何回もごめんって言ったんだよ?
あなた
うん。
バーノン
次言ってきたら新しいの買う。
あなた
お気に入りだったんだろうね。
バーノン
ねぇ、あなた、ご飯ある?
あなた
キッチンに、朝のサンドイッチなら置いてあるよ。
バーノンは「OK」と小さく返事して、ゆっくりとキッチンに向かう。

怒っている様子でも、反省している様子でもないバーノンを見届けて、私はスングァンの部屋に。
あなた
スングァン。
ドアをノックをすると、「なに?」と眉毛を上げてスングァンが出てきた。
あなた
さっきのスウェット貸して?
スングァン
ん?
スングァンはタタタッと奥に入り、すぐにさっきのスウェットを持ってきて私に渡した。

このケチャップ?のしみ、たぶん取れる。
あなた
ちょっと待っててね。
スングァン
ん?うん。



1時間後、お腹を空かせてキッチンに来たスングァン。

洗濯物を畳む私の後ろのソファには、スマホに夢中のバーノンがまだ座っている。

あなた
スングァン。
スングァン
ん?
あなた
じゃじゃーーん。
部分的にまだ濡れてはいるけれど、シミの取れたスウェットを見せる。

キッチンからこちらへ、目を大きく開けて駆け寄ってくるスングァン。
スングァン
シミが、なーーーい!
バーノン
…え、まじ?あなたがしたの?
あなた
うん。
スングァン
オンマーーーー!…オンマーーー!
スングァンの大きな声がリビングに響き渡る。


私は、オンマじゃない。



バーノン
あなた、すごいよ。
スングァン
うん、まじですごい。でもチェバーノン、お前にもう服は貸さない。
バーノン
まぁ黙って借りるよ。

プリ小説オーディオドラマ