午後3時。
ダイニングテーブルに座り本を読んでいると、キッチンにきたジュンが声をかけてきた。
そう言ってジュンが取り出したのは、美味しそうなチーズケーキ。
ちょうどおやつの時間だからか、思わず目を奪われる。
私が頷くと、ジュンは嬉しそうにダイニングテーブルにケーキを置き、フォークをとりにキッチンへ向かった。
2人きり。向き合って座る。
もぐもぐと、咀嚼音だけが響く。
視線を感じて前を向くと、ジュンと目が合う。ニコニコと微笑むジュンに、私も思わず微笑む。
外食組が部屋に戻ってきた。
私とジュンを見て一言ずつコメントしながらリビングに向かう。
ジュンは黙々と食べ続けながら頷いている。
ジュンの唇の辺りにケーキの食べカスがついているので、手を伸ばすとジュンがハッと気づき顔を上げる。
少し首をのばしてきたジュンの要望に応え、ケーキの食べカスを手で触って取った。
リビングからの大きな会話。
そしてディノからの急な問いかけに、2人で顔を向ける。
予想外のジュンの言葉に、全員固まって、時が止まったかのように静かになる。
私も少しパニックで、思考回路停止になり、ジュンの方を見れない。
普通、照れないの?
目の前のジュンをチラッと見ると、フォークを口に挟んだまま、歯を見せてクスクスと、いや、イヒヒッと笑っていた。
リビングから聞こえるゲラゲラ笑い声。
私は真っ赤なまま席を立って2人分のフォークを洗いに行った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。