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第1話

最後のデート。
1,420
2018/11/19 12:16





その日は、ユンギと付き合って1年記念日だった。


















いつも、お互いに忙しくてなかなか会えなかったのに、なぜかその日だけは二人とものスケジュールが、はかられたかのように空いていた。


すぐに私はユンギとデートの約束をした。














久しぶりのデート。



嬉しくて嬉しくて、その場でちょっと飛び跳ねてみた。



服を選んでる時間。シャワーを浴びている時間すらもデートをしてるかのように楽しかった。















デートの日。


ユンギはバイクで家の前まで私を迎えに来てくれた。

後ろにちょこんと座って優しくユンギをぎゅっとした。





「 もっと強く掴まないと、落ちても知んねーぞ。」







そんな言葉にあまえて、私は強くユンギをつかんだ。










それから、いろんなところへ行った。言ってしまえば最悪のデートだった。



遊園地では雨が降り出して何も乗れないし。予約してた人気のカフェだって、何かの手違いで予約が出来てなくて、近くの蕎麦屋へ行った。





でも、最後に見た夜景だけは最高だった。



ユンギのバイクに乗って、結構高いところまで走らせて行ったら、そこには星空のような夜景が広がっていた。



正直、これだけで今日のデートは最高のデートになった。










「 寒くねぇか?風邪ひくなよ。」


そんな優しくユンギの言葉が私の心を暖かくしてくれた。



『 うん。大丈夫だよ。』



「 これ着ろ。」





そう言ってユンギは自分が着ていた上着を私に着せてくれた。

ユンギは半袖。

絶対寒いはずなのに、「暑いから」と言って、気を遣わせないようにしてくれた。







帰り道、夜景を見るために登った山を降りていった。


帰りが遅くなったことを心配しているのだろうか。だんだんスピードが速くなっていった。





『 ねぇ。ちょっと速くない?』



「 そうか?速い方が気持ち良いじゃん。」





スピードは落ちることなく、どんどん速くなっていった。







『ねぇ。ちょっとこわいよ!もうちょっとスピード落として!』







異常な速さに、私は怖くなって少し怒鳴ったみたいに言ってしまった。






「 わかった。じゃあ、3つお願い聞いてくれたら、スピード落とすよ。」



『わかった!わかったから!!お願いって何!』




いつもは安全運転をして、私を気にかけてくれるユンギ。

でもなんか今日は違った。





「 バイクのヘルメットって結構重くて首が疲れるんだ。ちょっととって、お前がその間かぶっててくんない?」



『 わかった 』






私はユンギのヘルメットをとって、自分がかぶった。





「 二つめは、もっと俺の腰をぎゅっとつかんで。離さねぇように。ぎゅと。」




『うん…わかった…』




「三つめは…愛してるって、言って。」




『え?なんで今そんなこと…』




「いいから。言え。」




『…愛…してる…』




「ありがと。俺も。ずっと、愛してるから。」




『うん!わかったから!!早くスピード落として!!』




「 おう…今落とす。

ごめん。」








そう言ったとき、ユンギの目から光る何かがこぼれ落ちたような気がした。










『え?なんで謝るn…








そう言おうとした瞬間、バイクは激しく横転した。















冷たい地面。


何万個もの星が空では眩しいほど輝いていた。








燃え出したバイクの向こうで、ユンギは血を流しながら倒れていた。



すぐにユンギのところへ行こうとした。
でも、体が動かなかった。








『ユン…ギ… 』







薄れていく意識のなか、私はユンギの名前を呼んだ。






そのとき、ユンギが目を開けた。
ユンギは私を見つけるとニコッと笑って、






「 だいすきだ。」







声すら聞こえなかったが、確かにそう言っていた。


私の目からは涙がこぼれた。




そして、視界がどんどんぼやけて何も見えなくなった。

























目を覚ましたのは病室のベットの上だった。







事故の日から5日も経っていた。




『ユンギ…ユンギは…?』







近くにいた看護師さんにすぐに聞いた。



だけど、返ってきたのは望んでいない答えだった。






「 ユンギさんは…頭を強く打ってしまっていて…運ばれたときには、すでに…」





頭が真っ白になった。




あのとき、私がユンギのヘルメットをとっていなかったら…







私がユンギを殺した。




自分を責めることしかできなかった。





それからしばらくして、警察の方が私の病室にきて、事故当時のことを伝えにきた。






警察からは、「あの日、あのバイクはブレーキがきかないようになっていた」という事だけを伝えられた。







あの時、その事に気付いていたユンギは私を助けるためにヘルメットを私にくれた。


遠くに投げ飛ばされてしまわないように、自分をぎゅとつかむように言ってくれた。





全部、全部が私のため。







警察は去る前に、何か小さい箱のような物を置いていった。






「これ、ユンギさんが病院に運ばれた時に手に握っていたものです。」




ゆっくりと箱を開けた。






中身を見た瞬間、涙が溢れだした。















指輪だった。














ユンギと私の名前、私たちの記念日が彫られている指輪。



ユンギは、あの日これを私に渡そうとしていたのかもしれない。




私はその日、その指輪をはめて眠りについた。



指輪をはめた手が、誰かに握られているような温かさを感じ、久しぶりに深く眠ることができた。









欲を言うとね、ユンギにはめてもらいたかったな。



この指輪。



fin.

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