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第1話

天界
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2019/06/27 13:20
『母様、人間の世界にいくにはどうすればいいの?』
『しぃーーー、、、声が大きいわ。柚、人間の世界には本当は行ってはいけないのよ。でも、どうしてもって時には、今あなたが身につけている羽衣を脱ぎ捨てなさい。そうすればここから降りることが出来るわ。詳しいことはこの紙に書いてあるわ。』
『そうなんだ、ありがとう母様』
『いいのよ、、、。柚、これからも小夏と仲良くするのよ。』
『?もちろん!急にどうしたの?変な母様。』
『、、、母様はこれから行くところがあるの。元気でね。二人とも愛してるわ。』
『母様?』


「っ!!!!!」
(またか、、、)
最近、よく小さい頃の夢を見る。
それは、母親との最後の会話の思い出。
あのあと、母は走ってどこかに行ったっきり、もう帰ってこなかった。父はいなかった。妹が生まれて直ぐに死んだ、と教えられていた。
なんで最近になってこの夢ばかりを見るのだろうか、、、。まあ、その理由の検討はだいたいついているけど。

私の名前は、柚。
これでも一応、神様だ。まあ、まだ見習いだけど。天界の片隅に妹と数人のお手伝いさんとひっそりと暮らしている。
妹の名前は小夏。私より5歳年下。この間の誕生日で、確か142歳だ。人間で言うとまだまだ若い方だから、、、18~23くらいだと思う。もちろん彼女も神様見習だ。

そんな私には随分と前から好きな 人 がいる。天界に住んでいない、人間界の人。その人のことが私はずっと好きなのだ。その人は、とても優しい人だ。何度生まれ変わっても彼はいつもいい人だった。罪を犯したことは無いし、いつでも誰にでも優しかった。その人のことを観察しているうちに、次第にひかれて行ったのだ。まあ、優しい人だってのだけが理由じゃないけど。

『神は、ずっと天界で生きなければならない。』という決まりがある。詳しくは、下界に降りてはいけない。また、下界への降り方を教えてはならない。というようなことなのだ。
私はそれを知らずに、自分のせいで母をなくした。最近になってやっと、お手伝いさんから聞き出したのだが、母は娘の私に教えた罰として、地獄で働かされているらしい。そのお手伝いさんが言うには、実は地獄の方が天界で働くよりもずっと楽らしい。でも、二度と天界の人とは会うことが出来ないのだという。

私はこの場所が嫌いだった。
自分の家は好きだ。お手伝いさんも、みんないい人だし。でも、天界のシステムは大嫌いだ。

私は少し前から計画を立てていた。
ここから抜け出す計画だ。
でも、妹がいるからいつも『今はやめておこう』と思い、諦めていた。
そんな妹も、もう立派な神様見習になった。
「もう、、いっか、、。」




私は明日、人間になる。

















--------キリトリ線--------
2作目です。
誤字があったらごめんなさい。
読んでくださってありがとうございました。

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