夢を見た。
坂田がいたからそこに行こうと走ってるのに全然進めない夢。
坂田はゆっくりペースで歩いてるだけなのに、俺がどれだけ走ってもその背中は遠ざかるばっかりだった。
坂田のことを呼ぼうとしても口を塞がれたように声が出なくて。
挙句の果てには後ろから掴まれて前に進めないようにひっぱられているような感覚になって。
後ろから僕をよびとめる声が聞こえてきて。
「お前みたいなSubより、もっといいSubの方が坂田くんには合っていると思うよ。」
「出来損ないのSubは坂田に近寄らないで。」
「ダメSub。」
そんなふうに言われ坂田の背中に伸ばす手をゆっくりと下ろし、追いかける足も止めた。
顔を上げてもそこに坂田はもう居なかった。
俯いて小さくつぶやく。
と、ふわりと安心する温度に包まれて、大好きな声で、
坂田の声が聞こえた気がして、暖かく抱きしめられているような気がして、ゆっくりと目を開ける。
ゆっくりゆっくり目を開けるとたっくさんの顔がおれを見ていた。
志「うらたさんっ!!!!」
セ「うらたん!!!」
ま「うらたさん!!!」
そ「うらたくん…!」
天「うらっさんん!!!」
lu「うらたんっ!!!」
め「うらたさん先輩、!」
nq「うらたさんっ、」
全員「おはよう(ございます)!!」
ボロボロに泣いているさかたに抱きつかれる、それに続くようにみんな俺の周りを取り囲んだり抱きついてきたりする。
なにごと?え、なになに…?!
だって、起きただけだよ?
こんなダメなSubのためにこんなに大人数が時間けずって…
ありがたいなぁ…
みんなの温もりを直に感じて、素直に嬉しいなぁと思う。
しばらくわちゃわちゃしているのをぼーっと眺める。
すると、
そ「もう…みんな抱きつくのもういいでしょ?さすがにうらたくんもつかれちゃうだろうし、俺ら顔見に来ただけだから。帰るよ?、ってことでうらたくん、また来るよ。坂田もばいばい。」
ま「そうですね、かえりましょうか。じゃあうらたさん!起きてよかったです!ゆっくりのんびりしてくださいね」
し「またいつでも連絡してな!!ばいばいうらたさん!」
セ「そうですよ!!なんでも連絡してくださいね!ではまた!!」
嵐のように去っていった…。
ここは坂田の家、かな?たぶん。
…おれ、なんでさかたの家にいるんだ?
…あ…、そうだった…、俺、坂田に助けられたんだ…
ご主人にっ、襲われて…怖くて…っ、苦しくて…っ、あ、やばい…、息っ…
途端に器官が詰まったみたいに息が苦しくなる。
まだまだ苦しいけど、少しずつましになっていく。坂田の声と背中をさすっている手、ほんとに凄い。
20分ほどすればやっと元の呼吸に戻る。
っ…?After…care…?
何、されるの?
怖い…
坂田の頬を透明な雫が伝う。
泣きながら強く抱きしめられる。
坂田は涙をグイッと拭うと俺を抱きしめたまま、話し始めた。
Commandじゃない英語…。
褒められているということに気づくのに時間がかかった。
…さかたっ、なんで、こんなダメなSubのことこんなに褒めてくれるの…?
坂田の褒め言葉はよけいなことばなんてなくて、すぅっと胸に吸い込まれるように入ってくる。
君がとても大切だよ。必ず守るよ。
って言うのがすごく伝わってくる。
なんとも言えない安心感が身体中を駆け巡る。
ふわふわの綿に沈み込むような、心地よい温度と、感覚に思わず目を瞑り、坂田の胸に体を預けるように安心感に飛び込む。
だんだんと意識が遠のいて、僅かに怖いと思っている気持ちは、さかたの肩に顔を埋めて抱きついて、さかたの手が背中を撫でてくれていることで落ち着いて、ふわふわの感覚に身を委ねる。
SubSpace?のふわふわの中で何を言ってるかはわからないけど、ずっと坂田の声がするから落ち着けた。
やがて遠くの方から坂田に呼ばれた気がしてゆっくり現実に引き戻される。
ゆっくりと坂田に焦点を合わせればふわりと微笑む赤髪のイケメンと目が合う。思わず頬が緩み、えへへっ、と笑う。
坂田が頭を撫でてくれて褒めてくれていることに嬉しさが込み上げ、思わず目を細めて擦り寄る。
だんだんと余韻が抜けて回らなかった舌も少しマシになってきた。
坂田が俺にお願い?なんだろ…
真紅の細い皮の首輪。
はめ込まれているのは緑の宝石。
坂田の独占欲が詰まった首輪は手に取ると普通のColorより、幾分か重たい気がした。
ずしりとColorの重みが坂田の独占欲を直に感じさせてくれて幸せな気持ちになる。
カチリと金具がはまる音がして、晒していた首を上げ、視線を今のご主人である坂田に向ける。
満足そうに微笑む坂田を見て俺も安心した。
✄- - - - - - キ リ ト リ - - - - - ✄
ありがとう。
幸せを僕と俺にくれてありがとうさかた、これからは笑わせてくれるのもいいけど守ってね?
愛してるよさかた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。