第8話

安心感
2,454
2020/01/05 12:23
夢を見た。




坂田がいたからそこに行こうと走ってるのに全然進めない夢。


坂田はゆっくりペースで歩いてるだけなのに、俺がどれだけ走ってもその背中は遠ざかるばっかりだった。


坂田のことを呼ぼうとしても口を塞がれたように声が出なくて。


挙句の果てには後ろから掴まれて前に進めないようにひっぱられているような感覚になって。


後ろから僕をよびとめる声が聞こえてきて。



「お前みたいなSubより、もっといいSubの方が坂田くんには合っていると思うよ。」


「出来損ないのSubは坂田に近寄らないで。」


「ダメSub。」


そんなふうに言われ坂田の背中に伸ばす手をゆっくりと下ろし、追いかける足も止めた。


顔を上げてもそこに坂田はもう居なかった。







うらた
うらた
俺みたいなダメな出来損ないのSubといたくなかったよな、ごめん、坂田。
俯いて小さくつぶやく。


と、ふわりと安心する温度に包まれて、大好きな声で、
さかた
さかた
そんなことないよ。僕はうらさん以外考えられへんもん。うらさんじゃないと嫌やし、。だからうらさん、帰ってきて?
坂田の声が聞こえた気がして、暖かく抱きしめられているような気がして、ゆっくりと目を開ける。
ゆっくりゆっくり目を開けるとたっくさんの顔がおれを見ていた。




さかた
さかた
う、らさ!!!!!!




志「うらたさんっ!!!!」


セ「うらたん!!!」


ま「うらたさん!!!」


そ「うらたくん…!」


天「うらっさんん!!!」


lu「うらたんっ!!!」


め「うらたさん先輩、!」


nq「うらたさんっ、」




全員「おはよう(ございます)!!」






うらた
うらた
ん…ぇ…?
ボロボロに泣いているさかたに抱きつかれる、それに続くようにみんな俺の周りを取り囲んだり抱きついてきたりする。



なにごと?え、なになに…?!



うらた
うらた
な、なに?
だって、起きただけだよ?
こんなダメなSubのためにこんなに大人数が時間けずって…


ありがたいなぁ…



みんなの温もりを直に感じて、素直に嬉しいなぁと思う。




しばらくわちゃわちゃしているのをぼーっと眺める。




すると、




そ「もう…みんな抱きつくのもういいでしょ?さすがにうらたくんもつかれちゃうだろうし、俺ら顔見に来ただけだから。帰るよ?、ってことでうらたくん、また来るよ。坂田もばいばい。」



ま「そうですね、かえりましょうか。じゃあうらたさん!起きてよかったです!ゆっくりのんびりしてくださいね」



し「またいつでも連絡してな!!ばいばいうらたさん!」



セ「そうですよ!!なんでも連絡してくださいね!ではまた!!」



嵐のように去っていった…。



ここは坂田の家、かな?たぶん。



…おれ、なんでさかたの家にいるんだ?




…あ…、そうだった…、俺、坂田に助けられたんだ…



ご主人にっ、襲われて…怖くて…っ、苦しくて…っ、あ、やばい…、息っ…



途端に器官が詰まったみたいに息が苦しくなる。


うらた
うらた
あっ…ヒュ…ッ、さか…、カハッ…ヒューッ、くるし、っ…
さかた
さかた
え、うらさ、大丈夫?!
ゆっくり、ゆっくり息して?
ほら、僕に合わせてゆーっくり。
すーーーっ、はーーーっ、すーーーっ、はーーーっ。
うらた
うらた
ハフッ…ハッ、ヒューーーッ、カハッ…ハーーッ
さかた
さかた
そうそう、上手やでうらさん。
まだまだ苦しいけど、少しずつましになっていく。坂田の声と背中をさすっている手、ほんとに凄い。


20分ほどすればやっと元の呼吸に戻る。
さかた
さかた
ん…もう大丈夫やな。
…思い出したくないやろうけど、
…うらさん…After care…してええ?
っ…?After…care…?
何、されるの?


怖い…
うらた
うらた
っ、ねぇっ、さかっ…After…care?ってなに…?何するのっ?
さかた
さかた
…!?!
したこと、ないか…そうよな…あんな奴…Aftercareするわけないな…ごめんうらさん、…
坂田の頬を透明な雫が伝う。
うらた
うらた
え、さかっ、泣かないでっ
さかた
さかた
んーん、ごめんなぁうらさん…っ!
泣きながら強く抱きしめられる。
さかた
さかた
ん、グス…
…っ、うらさん。よー頑張ったなぁ…今回だけじゃなくて、いままでずぅぅっと。偉い、偉いようらさん。Goodboyやで。
坂田は涙をグイッと拭うと俺を抱きしめたまま、話し始めた。
Commandじゃない英語…。
褒められているということに気づくのに時間がかかった。
さかた
さかた
今回も怖いこととか痛いこと、いっぱいされたやろうに、いっぱい抵抗して、僕の名前呼んでたんやろなぁ…健気で可愛ええ、僕のうらさん。
首輪はめられて、絶対従いたくなるように仕向けられてんのに、僕のやないからって頑張ってんなぁ。賢いなぁ。
恥ずかしいこといっぱいさせられたんやろ?よー、頑張ったなぁ…

うらさんは、僕の自慢のSubやで。
やからあんまり自分を責めんでな?

大好きやで、僕の可愛いうらさん。
…さかたっ、なんで、こんなダメなSubのことこんなに褒めてくれるの…?


坂田の褒め言葉はよけいなことばなんてなくて、すぅっと胸に吸い込まれるように入ってくる。


君がとても大切だよ。必ず守るよ。



って言うのがすごく伝わってくる。
なんとも言えない安心感が身体中を駆け巡る。


ふわふわの綿に沈み込むような、心地よい温度と、感覚に思わず目を瞑り、坂田の胸に体を預けるように安心感に飛び込む。





うらた
うらた
ぅ…あ……、な、にこれ…っ?
さかた
さかた
Sub Spaceやなぁ…!怖ないし、ちゃんと戻してあげるから、ゆっくり休んできてええよ。
だんだんと意識が遠のいて、僅かに怖いと思っている気持ちは、さかたの肩に顔を埋めて抱きついて、さかたの手が背中を撫でてくれていることで落ち着いて、ふわふわの感覚に身を委ねる。
うらた
うらた
ぁ…ふ…ぅあ…っ…
さかた
さかた
ふふ、可愛ええなぁうらさん…♡
僕、うらさんと一生一緒におるからな、守らしてや…?
愛しとるよ、うらさん。
SubSpace?のふわふわの中で何を言ってるかはわからないけど、ずっと坂田の声がするから落ち着けた。


やがて遠くの方から坂田に呼ばれた気がしてゆっくり現実に引き戻される。
さかた
さかた
うらさーん、おーい…、そろそろ戻っておいでよ?
うらた
うらた
…ぅん?…さかぁ…?
ゆっくりと坂田に焦点を合わせればふわりと微笑む赤髪のイケメンと目が合う。思わず頬が緩み、えへへっ、と笑う。
さかた
さかた
ん、偉いなぁ、ちゃんと戻って来れたな!
坂田が頭を撫でてくれて褒めてくれていることに嬉しさが込み上げ、思わず目を細めて擦り寄る。
さかた
さかた
あ、うらさん…、2つお願いがあるんやけど…ええ?
うらた
うらた
…お願い?
だんだんと余韻が抜けて回らなかった舌も少しマシになってきた。


坂田が俺にお願い?なんだろ…
さかた
さかた
1つ目は…これ…、Color…、僕のうらさんのためのColorやから、つけて欲しい。これから毎日ずっとつけてて欲しい…。
真紅の細い皮の首輪。
はめ込まれているのは緑の宝石。
坂田の独占欲が詰まった首輪は手に取ると普通のColorより、幾分か重たい気がした。
さかた
さかた
実は…、前からうらさんにあげたくて、作ってあったんやけどね…?今回のことで僕、渡しとけば、つけて貰っとけばってめっちゃ後悔してん。
うらさんがまたいなくなるのが、めっちゃ不安で、うらさんが寝てる間に、GPS強化して、金具も手順踏まないと外せんように加工して、うらさんの脈とかも計測して、危険察知できるように新しい機能も入れてもらってん。
うらさんをもうこれ以上傷つけさしたくないんよ、そんくらいうらさんのこと、大好きで大事に思ってんねん。

…claimのうらさん、愛してます。
僕のColorを受け取って貰えませんか?
うらた
うらた
っ、もちろんです…!俺も、坂田に守られたいし、坂田じゃなきゃヤダ。
でも俺、甘えただし、かまちょだし、めんどくさい性格だし…、それに、坂田のこと、俺の事裏切るんじゃないかって、しばらくは疑うと思うよ?それでもいい?俺でいいの?
さかた
さかた
うらさんがいい。
僕にはうらさんしかおらんよ?
Color僕がつけてもいい?
うらた
うらた
…うん、お願い。
ずしりとColorの重みが坂田の独占欲を直に感じさせてくれて幸せな気持ちになる。



カチリと金具がはまる音がして、晒していた首を上げ、視線を今のご主人である坂田に向ける。


満足そうに微笑む坂田を見て俺も安心した。





✄- - - - - - キ リ ト リ - - - - - ✄






ありがとう。
幸せを僕と俺にくれてありがとうさかた、これからは笑わせてくれるのもいいけど守ってね?


愛してるよさかた。

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