第7話

後悔(side❤️)
2,478
2020/01/03 05:38
飲み会に行ってむりやり僕とまーしぃとセンラを帰したあとから、うらさんと、連絡が取れない。


何度電話してもLINEを入れてもずっと未読のまま。


挙句の果てには音声メッセージで


『おかけになった電話は電波の届かないところにあるか電源が入っていないため、かかりません。』


と、無機質な女性の声で伝えられる。



不安で心配で仕方なくなって当てもなく探し回った。


うらさんは真性のSubだからどこかで心無いDomに襲われているのかもしれない。


と、やすやすと想像出来てしまった。



どうして首輪を渡しておかなかったのかと何度も後悔した。


ずっと前に買って渡せていないColorには緊急時に僕に連絡が来るようになる設定もしてあるし、GPSも搭載されている。


うらさんに渡してさえいれば、付けさせてさえいれば…


何度後悔しても、今はうらさんをあてもなく探すことしか出来ない。


数日が経過してもうらさんとの連絡は途絶えたままだった。


そらまふやしません、ほかの歌い手仲間、マネージャー、色んな人にうらさんと連絡を取ってもらうよう頼んだけど誰一人連絡を取れた人がいなかった。



最初に頭に浮かんだ最悪の事態だけはありませんように…と祈りつつ、警察を尋ねる。


うらさんの行方についての情報は得られなかったけど、スマホをケータイ屋さんに持っていけば、電話をかけた時にどこの電波塔を経由したか、など、ヒントが得られるのでは?と言われ、藁にもすがる思いでショップに走る。


そこで教えて貰った結果からうらさんのいそうな範囲を絞り込み、片っ端から調べた。



そしていざ1番可能性が高かった、町外れのホテルに着けば、嘘であって欲しいと願った思いも虚しく、信じ難い光景が広がっていた。



扉を突き破ると、うらさんの靴と、知らない人の靴が合わせて二足分散乱していて、僕は土足のまま廊下を駆け抜ける。


何枚も左右にドアがある廊下の一番奥、何故か1枚だけ防音扉になっている部屋。


見た目は大差なくてもまふの家の防音扉を何度もくぐった僕はひと目でわかった。それにその扉の向こうから、うらさんが呼んでる気がした。


鍵はかかっていたから2、3歩下がってから思い切りドアに体当たりすれば、案外簡単に扉は開いた。








そこにうらさんはいた。






知らない男が壁になってしまってあまり見えないが、全身の白い肌をあらわにさせられて、首には真っ黒い独占欲が巻きついていた。



そしてその独占欲からは丈夫な鎖が伸びていて壁とうらさんの首を繋いでいた。




うらさんはその知らない男に首を絞められるようにして持ち上げられ、足は宙に浮いていて手はずるりと垂れ下がり抵抗すらままならない様子だった。








さかた
さかた
っ、うらさんっ!!!!
モブ
モブ
なんだよお前!!…こいつは俺の奴隷だ。俺に飼われてるんだよ。何年も前から!!!
さかた
さかた
は?どーゆーこと?
モブ
モブ
こいつはな、まだガキん時から俺に飼われてんだよ。
なのに逃げ出しやがったから、捕まえに来たんだよ。チッ、なのに、ぜんぜん言うことをききゃあしねぇ。
だから、使えねぇSubは殺してやろうと思っただけだよ。




僕のなかで堪えられない怒りが湧き上がり気がついたらGlareを発していた。


今までの人生で出したことがないレベルの強大なGlare。


男も負けじとGlareをだしてくる。この男のGlareだいぶ強い。気を抜けば、膝を着いてしまいそうになるほどのGlare。




僕が真性のDomちゃうから…
こんな大事な時に何も守られへんの?
うらさんを守らしてや…!!


こんなん負けたら一生うらさん、帰ってこん。何がなんでも、うらさんを取り返したい。


……取り返したいのに。



さぞ強いDomであろう目の前の男。
僕がどれだけうらさんを思っていても、勝てそうにもない巨大なGlareを前にして、人生で初めて屈服しそうになる。


視界の片隅には明らかにdropしてしまっているうらさんが倒れている。


守りたい。守りたい。助けたい。一緒にっ、一緒に帰りたい。


最後の気力を振り絞りGlareを増強させる。


やっぱり現実は厳しくて、数分に及ぶGlareのぶつけ合いで、敗北し、膝が崩れたのは


…僕だった。




悔しくて苦しくて、思わず俯きそうになった時、突然背中に感じたことの無いほどの莫大なGlareを感じた。
さかた
さかた
…え?
背後からの物凄いGlareに思わず背筋を正す。


支配とか僕を屈服させようとするGlareじゃなかった。


立て。


そう背中を押されているふうに感じた。




振り返ると開いたドアから、紫髪が、飛び込んできた。
さかた
さかた
ま、まーし…ぃ?
志麻
志麻
っ、さかた!!何してんねん!はよ立て!!


うらたさん、助けるんやろ?!
まーしぃは真性のそれも、相当強いDom。


きっと僕の後をおってきてくれたんだろう。



まーしぃの言葉にハッとして崩れた足に力を入れる。



まーしぃの強大なGlareにだんだん弱まり出す男のGlare。


僕が歯を食いしばり立ち上がって再びGlareを発すると男はとうとう崩れた。



僕は拳を握りしめ、男の頬を思い切り殴った。




壁まで吹っ飛ばす勢いで何度も殴りつければ男は動かなくなった。



ふと自分の足元を見れば男の衣類から落ちたと思われるうらさんの首輪の鍵を見つけた。



男が気を失っていることを確認し、うらさんの元へ向かう。



まーしぃは警察に連絡し、淡々と男を縛っていた。


あのヒモでうらさんのことを縛り付けて、そこらじゅうに落ちている薬やらオモチャやら、スタンガンや危ないものたちでうらさんを弄び、苦しませた、それを男が楽しんでいたんだと思うとまだまだ殴り足りない。



死んでも許せない。






深く深くdropしてしまっているうらさんに優しく話しかける。
さかた
さかた
うらさ、うらさん。来たよ。坂田。坂田やで。もう、大丈夫やからな。遅くなってごめんな。辛かったよな、怖かったよな。生きててくれてありがとうな…。
やから、やから起きてやうらさん…。
涙で滲む視界の中で傷だらけのうらさんを抱きしめる。


涙が行く筋も自分の頬を伝う。



うらさん、どんだけ苦しかったやろ。
辛かったやろ。怖かったやろ。


もっと早く見つけてあげたかった。




体はあちこち痣だらけ。スタンガンを当てられた痕や、オモチャでやられたであろう真っ赤に腫れ上がった乳首。首には締められた痕があり、太ももからは知らない液体の筋がてらてらと光っている。挙句の果てにはうらさんの自身を締め付けるイカさないための細い紐が巻かれたであろう痕まで見つけてしまった。




Subの中でもバニラ属性であるうらさんはこんな痛いことや苦しいことは嫌いなはずだ。

そして甘やかされたり褒められたりすることが好き。



あの男が言っていた、飼う…なんて表現は以ての外。




辛かったやろうな…




声をかけても目覚めないうらさんを僕の上着で包んでまーしぃの上着をかぶせて、姫抱きにし、連れて帰ることにした。



病院に行かせるのが正解なんだろうけど、この状態のうらさんを人に任せたり、目の届かないところに行かせるのは僕が耐えられへんな、と思ったから。



来た警察にあとを任せて、帰宅した。


まーしぃはclaimであるセンラをほったらかして来てくれたそうなので帰ってもらった。



今度ちゃんとお礼しないとな…

家に着いたらdropしてるところ申し訳ないと思いつつも、とにかく風呂に入れた。


体の妙なテカリから、変な薬を塗られてる可能性が大いにあるし、ナカに出されてるものを早く掻き出したい。




悪いなとは思いながらも、ナカに指を2本突っ込む。全然余裕で入ってしまい、苦しい気持ちになる。



そして指を中で動かす度に敏感に反応を見せ、吐息が漏れているうらさんを見て、後悔とあの男への憎しみが募る。



隅々まで綺麗にして、しっかり体を拭く。バスローブを着せて、ベッドに運ぶ。



そこからは根気勝負だった。



僕は何日も何日も眠らずうらさんに声をかけ続ける。



毎日毎日、起きるまで。



仕事も自宅でできること以外は全部延期にした。


何人もお見舞いに来てくれた。



まふとそらるさん、しません、Sum、luz、天月。


僕とはあんまり接点のないめいちゃんやnqrseちゃんまで。



そ「うらたくん…どう?」

ま「まだしばらくかかりそうだね…」

志「くっそ…俺がもっと早く行ってたら…」

セ「志麻くんのせいちゃうよ…。…うらたん…、起きてぇや。」

S「そうですよ、悪いのはアイツだけです…」

luz「…うらたん、みんな待ってるよ?」

天「さかたも、ちゃんと休め、最近寝てないだろ、目の下のクマやばいもん。」

め「うらたさん先輩…っ」

nq「うらっさん…」


さかた
さかた
みんなありがとう…。

ほら見てみ?うらさん。こんないっぱい来てくれてんで?みんな、うらさんのこと、心配やって、はよ戻っておいでって…っ…くそっ…なんでやねん…。
ボロボロと涙がこぼれて止まらない。


なんで、なんで、守ってあげれなかったんやろ…



まふと、センラがつられてすすり泣き始めた。

そらるさんとまーしぃがそれを宥める。

天月は僕の背中をさすって、ゆっくりゆっくり

「大丈夫、坂田は悪くないよ」

なんて励ましてくれる。




でもやっぱりこうなったのは僕のせいやと自分を責めた。


プリ小説オーディオドラマ