──遅くなって、ごめんな
青葉が
美空姉ちゃんが眠る場所で
手を合わせた。
清々しいほど晴れ渡るみ空からの
木漏れ日が青葉をそっと包む。
青葉は立ち上がると
手を首の後ろに回し
朗らかに微笑むと、
「じゃ、行くか」と言った。
こんなに溢れ出すような
嬉しさが込み上げたのは初めてかもしれない。
──姉ちゃん、いいんだよね?
思わずはしゃいで青葉の腕にしがみついた。
煙草くさい12歳上のオジサンでも──
たった1人の、幼なじみで、
初恋の人。
でも
青葉は、
昔も
今も
そしてこれからも
美空を思ふ──。
たなびく雲が旗を振る。
それは届かない手紙のよう。
どうして道は一方通行なんだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!