第6話

色褪せるモノ
102
2021/02/07 02:06
小畑さん
そらちゃん、
今日もありがとうね
_ 堤 天子@つつみ そらこ_
堤 天子つつみ そらこ
いえ
小畑さん
何度聞いても好きだわ。
この作家さんの絵本。
どの作品も愛を感じるのよね。
 小畑さんのその言葉を聞くのは初めてじゃなかったけど……毎回自分のことのように嬉しくなる。
小畑さん
それに、
そらちゃんの
声も素敵!
 高校生になった私は、
 近所の図書館などで読み聞かせの
 ボランティアをしている。


 小畑さんは、司書の優しいおばあちゃん。
_ 堤 天子@つつみ そらこ_
堤 天子つつみ そらこ
お役に立てたなら……
 人付き合いは苦手。

 所詮しょせん他人は他人。
 これ、私が17年間生きてきた教訓?

 相手が喜ぶ言葉とか、
 悲しむ言葉とか……
 考えても私にはわからない。

 周りの人の言葉だって、
 大体はテキトーで
 
 信じられないことばかり。


 でも、姉ちゃんの絵本は

 姉ちゃんが残した言葉だけは、
 本当の言葉で……
 その音に触れるだけで温かい気持ちになれた。

 私には姉ちゃんみたいな才能はないけど、
 姉ちゃんの言葉を届けることはできるから……

 きっかけは、近所の人に頼まれたことだったけど、こうして読み聞かせのボランティアは、なんだかんだ続いてる。
小畑さん
あそうそう、
そらちゃん──
_ 堤 天子@つつみ そらこ_
堤 天子つつみ そらこ
はい?
 私は、絵本を本棚にしまう手を止めた。
小畑さん
私がね、昔勤めてた出版社で
朗読者を探しててね、
そらちゃん興味ないかな?
 小畑さんからチラシのような紙を受け取った。


──サクライロ出版


 姉ちゃんのとこだ……。


 それに──
_ 堤 天子@つつみ そらこ_
堤 天子つつみ そらこ
興味……あります
小畑さん
それはよかった。
担当にも連絡しておくね
_ 堤 天子@つつみ そらこ_
堤 天子つつみ そらこ
はい。
よろしくお願いします
 私は、棚に並んだ絵本を見つめて
 そっと指でなぞった。


──カッパの「あお」と、カッパの「てん」


 その兄弟のことを、みんなは知らない。




 アイツ、いるかな──。

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