翔side ..
『奪おうと思っても無駄だからな』
俺が如月由真とすれ違った時に、
あいつにいった言葉。
この言葉を聞いた如月は、
なんとも言えない表情をしてた。
__________わかりやすいんだよ。
如月って奴が、あなたのこと好きだって。
俺と、あなたが話してるとき、
あいつがこっちをじっと見てたことも、
あなたと話してるとき、あいつが何よりも嬉しそうにしてるのも。
そんな如月をみても、
あなたは「由真は私のこと嫌いだ!」って。
鈍感すぎて逆にすごい。
さりげなく、あなたの手を掴んで、
手を繋いでみて平然を装ってるけど、
本当はすごいドキドキしてる。
「あなた、帰りどこか行きたいところある?」
俺が、あなたに聞くと、
あなたは「んー…」とだいぶ悩んだ顔をしてた。
悩んでる顔も可愛い。
「特に…ないです」
やっぱりないかぁ。
だからと言って、このまま帰りたくない。
好きだったあなたを彼女に出来た日。
ちょっとどこかに寄り道したい気分だった。
女子って甘いものとか好きなのかとか、
どこか行くところはないか、と悩んでいる時……
「お、あなたじゃんー」
少し遠くからあなたを呼ぶ声が聞こえた。
__________男の声。
「あ、タッキー!」
あなたはその声をきくと、
嬉しそうにそいつに手を振った。
その瞬間、自然に離された俺とあなたの手。
__________あぁ、あまりいい感じしないな。
誰だこいつ…。
「ん、あなた。隣にいるのはカレシー?」
タッキーとかいう奴が俺のことをみて、
笑いながらそう言った。
あなたは少し困った表情して「えっと…」ってオドオドしている。
彼氏!って言い切って欲しかったけど。
付き合って数時間だからまだしょうがないか。
俺は、あなたの後ろにまわりこみ、
後ろからあなたに軽く抱きついた。
ビクッと少し震えたあなた。
__________あぁ、かわい。
「あなたの彼氏です、あなたの中学生の友達かな?」
とあまり違和感がないように言う。
高校にこんな奴見たことないし、
多分あなたの中学の友達なんだろう。
「あ、やっぱりあなたの彼氏でしたかー!あなたをよろしく頼みますねっ!」
嬉しそうにニコニコして、タッキーという奴は言った。
よろしく頼みますねって、こいつはあなたの何なんだ…。と少し思ってしまう。
「じゃ、俺そろそろ行くわ!」
「タッキーばいばいっ。美奈と仲良くするんだよ〜!」
「おーう!ありがとな!」
そんな会話をして、
タッキーという奴は消えていった。
なんだ、彼女持ちだったのか。
あなたに近づく男全員に敵対心を抱いて、変に嫉妬心を燃やしてしまう。
……あぁ、俺ってかっこわる。
それでも、あなたが魅力的な女という事にはかわりないし、
俺の独占欲がなくなることは無い。
むしろ、好きになればなるほど、
付き合えば付き合うほど、
どんどん強くなっていくと思う。
「あなた」
俺があなたの名前を呼ぶとあなたは急いでこっちを振り返った。
「クレープ…食べに行く?駅前に新しい店がオープンしたらしいし」
あなたから前甘いものが大好きだという話を聞いていたから、
無難にクレープ店ならどうだろう、と思った。
あなたの顔を見てみると…、
めっちゃ目が輝いてる。
本当に好きなんだな、甘いもの…。
「い、行きますっ!」
嬉しそうに答えるあなた。
あー…可愛い。
そう思って、再びあなたの手を握ってクレープ店に向かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!