「あなたちゃん、俺はそんなに優しくないよっ」
苦笑いして言う遊佐。
いつも優しいとか言うと、否定するけど、
絶対遊佐は優しいと思うのにな…。
「ほんと抜かりないよな、遊佐は…」
「その言葉、そのまま由真に返すよ」
遊佐と由真が2人で話してる隙に、
私と桃果はテキトーに色々見に行った。
……あ、このリボン可愛い。
遠足とは関係ないけど、
結構可愛いリボンを見つけた。
「ねぇ、桃果、これかわい……あっ」
「…?」
後ろにいるのは桃果だと思ってたけど、
振り向いたら全く違う男の人だった。
「えっと、人間違えしました…」
「あはは、大丈夫だよっ」
優しそうな男の人でよかった…。
そう思ってその場から立ち去ろうとした、
__________その瞬間。
「これも一種の運命ってやつじゃない?」
男の人にグッと腕を掴まれた。
「えっ…あの…」
「いいからいいから」
_____全然良くないっ。
ただ間違えて話しかけたのが運命な訳ない。
とりあえず手を振りほどこうと思うが、
なかなか力が強くて振りほどけない。
このまま連れていかれるのはまずい…。
「あれ、あなたちゃん。その人と知り合い?」
「……遊佐っ」
良かった、危うく連れていかれそうになった…。
「知り合いなのっ?」
もう1回私に聞いてくる遊佐。
いや、この態勢と言いこの私の表情。
明らかに知り合いだったらおかしい。
「…知り合いじゃない」
「…そっか、じゃあ…」
遊佐はゆっくり男の人の方へ近づき、
男の人に私に聞こえないくらいの声で何かを言った。
それと同時に男の人はなんとも言えない顔で、
私の手を離しどっかへ消えてしまった。
「えっと…、遊佐ありがとっ」
どうやって解決したのかは分からないけど、
助けてくれたことに変わりはないからお礼を言う。
「あなたちゃん、あーゆーのに捕まっちゃダメだよ」
捕まりたくて捕まった訳でもないけど…。
「…そのリボン欲しいの?」
あ、そういえば、リボン握りっぱなしだった。
桃果に見せようと思ったのに、
桃果いなかったなあ。
「可愛いとおもってっ」
「そっか、ちょっとそれ頂戴。」
「うん?」
遊佐の手にリボンを置く。
遊佐はそれを手に取ると、
「ちょっと待ってて」と行ってどっかいってしまった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!