第27話

27.奪い愛⑥
1,027
2018/03/17 12:55



やっぱり不仲だったから、
言わない方が良かったのだろうか…。



「…あなた」


「は、はいっ」


「やっぱり俺のことも翔って呼んで、先輩付けずに」




翔先輩は真面目な顔で私に言ってきた。


……あ。
そっか、分かった。

翔先輩は、
由真の時も最初、下の名前呼び捨てにしてるのを聞いたとき、あまり良くない表情を浮かべてた。

きっと、遊佐も下の名前呼び捨てにしたのがあまりいいことと受け止めなかったんだと思う。


……だけど、翔先輩は翔先輩の方が呼びやすいっ。



「翔、」


「……先輩」


「先輩いらない」


「…う」



どうやら翔先輩は本気らしい。
この際、もう呼び捨てするしかないか…っ。

そう決めた時、
生徒会室の扉を開ける音がした。




ガチャ




「どー?翔。仕事は順調?って、あなたじゃないの!」



入ってきたのは生徒会長だった。

そういえばあの事件以来、
あまり生徒会長とは話せてなかったんだ。


生徒会長は私の顔をみるなり、
すぐに謝ってきた。



「あなた、この間はごめんね。勘違いさせちゃって」

「いや、私の早とちりが原因だったので…」




実際、生徒会長は何も悪くない。
全部早とちりで勘違いして暴走した私が悪いから…。



「良かった、それに私には翔なんかよりイケメンな彼氏がいるからね」


「…一言余計じゃない?」



生徒会長がイケメンと言うくらいだからよっぽどイケメンなのだろう。




「それより、まだプリントそんなに残っていたのね、流石に翔1人に任せたのは酷かと思って戻ってきたけど…」


「まぁ、あなたもいれば3人で早く終わるだろうし、とっとと終わらせよっか」




生徒会長が私の分のプリントを少し取り、
慣れた手つきでプリントを綴じ込み始めた。




「…」




翔先輩はなんだか腑に落ちないような顔をしている。


生徒会長が丁度いいタイミングで入ってきたから、
下の名前呼び捨ての話題はどうにかなくなった。


でも、呼び捨てで呼ぶ時も来るだろうし、
心の準備をしておかなきゃ…っ。







こうして、翔先輩と生徒会長と私は、
生徒会長の彼氏の惚気話や、
私と翔先輩の関係について少し話しながら、
日が暮れる寸前まで作業をした。


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