「遊佐、まじでこいつの怖がりは異常だぞ」
「……そんなことないっ」
「怖がりの女の子の方が可愛いじゃんっ」
確かに自分の怖がりっぷりを見られたら、
流石の一ノ瀬くんも引くかもしれない。
「……さっき、一ノ瀬はあなたを守るって言ってたけど、一ノ瀬には彼女いないの?」
桃果が私たちの間を割って聞いてきた。
確かに……。
一ノ瀬くんって彼女いそうだけど…。
「あ、俺?いないよ」
……意外っ。
結構女慣れしてるからいるかと思ってた。
「あー、でも。好きな人はいる」
一ノ瀬くんは何故か私を見て優しく笑った。
一ノ瀬くんの好きな人かぁ。
……やっぱり歳上のお姉さん系なのだろうか。
そういえば翔先輩ってどんな女の子がタイプなんだろう。
「……遊佐、好きな人いたん?」
由真が驚いた顔をして一ノ瀬くんに問う。
由真も一ノ瀬くんの好きな人知らなかったんだね…。
「うん、まぁ片思いなんだけどね」
「……本気かよ」
「本気」
由真と一ノ瀬くんが淡々と会話している。
「……今までの女は?」
「全部別れ告げた。ってゆーか今ここであまり言わないでっ」
「あぁ、わり…」
…?
今までの女…?
一ノ瀬くんって結構いろんな人と付き合ってたのかな。
まぁ、そうじゃないとあんなに女慣れしないか…。
「メンバーが決まった班から班長が名前書きに来い~!」
由真と一ノ瀬くんの続いてた会話も、
先生の呼びかけで途切れた。
そっか、班長も決めなきゃなんだ…。
班長って結構集まりとかあるから、めんどくさいよね…。
「あー…班長とか俺、めんどくせぇからパス」
「俺もっ」
「私もっ」
「私もよ」
……やっぱりみんなやりたくないみたい。
「…ここはジャンケンだな」
由真が片手を出して言った。
ジャンケンなら公平だけど、
運すぎて当たらないか怖い。
でも話し合いとかじゃ決まらないしね…。
「「「ジャンケーンポンッッ」」
結局負けたのは一ノ瀬くんで、
一ノ瀬くんは渋々黒板に班のメンバーの名前を書きに行った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。