第28話

28.奪い愛⑦
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2018/03/21 01:01






翔side










「ふ…ぅっ、やっと終わった。翔、あなた、ありがとね」



もうすぐ日が暮れる。
この作業を俺一人にやらせようとしてた梓は恐ろしすぎる。



「お疲れ様でしたっ」

「お疲れ、プリントは私が適当に置いてくるからあなたと翔は先帰っててね」



梓はプリントの山を持ち生徒会室を出ていった。
梓なりに気を使ってくれたんだろう。



「あなた、帰ろっか」

「あ、はいっ」



さりげなくあなたの手を握る。

未だにあなたは慣れないのか、
耳を赤くしている。


こういう顔を見れるのは俺だけでいい。
……一ノ瀬遊佐とか見てないといいけど。



最近、俺の頭の中は、
一ノ瀬遊佐とあなたの心配でいっぱいだ。

勿論、如月由真のことも考えてない訳では無い。

だけど、一ノ瀬遊佐と如月由真は危なさが別物というか…。
ある意味如月由真はあの性格だけど、奥手ということでまだマシなほうだ。




「ねぇ、あなた」


「…?」


「さっきの話、覚えてる?」




あなたにさっきのことを問うと、
あなたは少し顔を歪ませた。

……ということは覚えているんだな。



そんなに、俺の名前って呼び捨てしにくいのだろうか。

それとも、あなたが先輩は呼び捨てできない!という人間なのだろうか。



「…そんなに呼び捨てしにくい?」



俺があなたに聞くと、
あなたはコクリコクリと頷いた。




「…他の人のことは呼び捨てできるのに?」

「だって…、好きな人の名前を呼び捨てするってなんか恥ずかしい…ですもん」




顔を赤らめて言うあなた。

……嬉しすぎるだろ。
付き合ってる彼女に好きな人、と言われるだけでこんなに嬉しいのもおかしいと思うけど、凄い嬉しい。



「…そっかぁ、じゃあ、まだ少し後でいいかな」


「えっ」


「翔って呼び捨てで呼んでくれるの、もう少し待ってる」




あなたの一言で上機嫌になった俺は、
さっきの一ノ瀬遊佐への敵対心を忘れていた。






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