それにしても相手のサーブが強い。
一撃が重くてうまくレシーブできない1年生に変わって、レシーブを受け続けたせいか膝が軋む。
怖いとかなんとか言ってられない。私がカバーすると決めたからには、私の仕事はきっちり熟
さなくては…!!
そして私はいい音を響かせて、ボールを高く高く上に上げた。
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来る。明のスパイクが来る。
目を瞑って助走してきて、高く高く飛び上がった瞬間、明は私の方を見てニヤッと笑ってからあの頃より何倍も威力の強いスパイクを打ち付けてきた。
目が合った。
目を開いていた。
明がボールを見て、ちゃんとボールに合わせて腕を振った…?
私の出来なかったこと。
ただただ悔しかった。
とりあえず上に上げたのはいいものの、1発で向こうに返ってしまった。
そして1本、決められてしまった。
私は、いつも自分さえ修正すればいいと思っていた。
違った。
明の力をダメにしてたのは、私。
悔しかった。その悔しさでぐちゃぐちゃになりそうな自分を奮い立たせてなんとか戦った。
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試合に勝って、勝負に負けた。
そんな気分だった。
膝は軋むし、悔しい思いばっかりだし、やるせなくて仕方がない。
明に背中を押されるようにしてコートを出た私は、チームメイトと勝利を喜び合うこともせず、いそいそとトイレに駆け込んだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。