第62話

キミは隼人クンでしょ?
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2021/02/04 12:02
そこからこっちのペースは一気に崩れて行った。



ありったけの川西のスパイクも止められるし、周りの素人どもは役に立たないし。
でもそんな考えダメだ。


だから女王だなんて言われてしまう。


やだ、こんな自分が嫌いだ。
天童覚
んー、そういうところだヨ?焦らなくていいと思うし、隼人クンはちゃんと強いから大丈夫!
あなた
皮肉…ですか?
天童覚
なんのことカナ?だって、焦って1人になっちゃったのはお姉ちゃんだよネ?
キミは隼人クンでしょー?と言いながら、ニコニコと笑う天童。


果たして何が言いたいのか、藍原にはその魂胆が全く分からない。
あなた
じゃあ…姉ちゃんはどうすれば良かったんですか?
天童覚
簡単なことだヨ!仲間のことを信じて、冷静に落ち着いてるだけで良かった。
あなた
信じて、冷静に…
天童覚
仲間を生かすも殺すもセッター次第!インハイ予選頑張ってヨ♡
ドロ沼のように抜けられない過去のしがらみにずっと取り憑かれていたんだと思う。



でも、そんな単純な答えで一気に引き上げられたような、すがすがしい気持ちになった。
あなた
姉ちゃんに、伝えときます。ありがとうございました。
頬を両手で一度叩き、集中を高めるとふーっ、と深く息を吐いた。
それにしても、3年ぶりに藍原が試合に出るなどどうして分かったのだろう。



女バレの朝練にはここのところほぼ毎日通っているが、知り合い以外に試合に出ると伝えたことはない。
天童覚
練習もほどほどにネ。指傷んじゃうカラ。
指先を見ただけで分かるというのか。



ほんとにどこまでも人の気持ちが分かってしまう天童、末恐ろしい。
あなた
この点差、取り返す。
グッと前髪をかきあげて、メンバー全員に聞こえるよう、そう意気込んだ。

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