第81話

久しぶりのあの子はやっぱり馬鹿で
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2021/04/03 19:50
あや
なんか、さっきの練習で相手のスパイクすごくなかった?
1年生
去年のベスト8ですもんね…私のところにきませんように!
あや
もっとちゃんと朝練出とけばよかったな…
藍原が帰ってきたときに聞こえてきた言葉。


思わずまた柱の影に隠れて聞いていた。


なんとなく、自分が入っていいのか分からなかったから。
道宮結
今から思うと、いっぱい時間あったよな…
道宮結
もっともっと練習出来たのかもしれない。やるべき事があったのかもしれない。
女バレ部員
結、今はそんな…
道宮結
でもそんなの関係ない!あと45分で試合開始の笛が鳴る。
道宮結
今私たちが出来るのは、ウォーミングアップをしっかりやって精一杯最後まで戦うこと!
道宮結
そして…勝とうよ!
その言葉にハッとなった。


自分がこのチームで過ごしてきた時間は確かに誰よりも短い。


それでも、皆とは仲間でありたかった。中学時代の過ちだけは繰り返したくなかった。
道宮結
あなただって私達に色んなこと教えてくれた、やれることはやってきたって信じようよ!
私は、ここでみんなと戦うんだ。


そう覚悟を決めて、みんなの輪の中にしれっと入っていくと、道宮にはバレていて「どこ行ってたの〜!」と叱られてしまう。
あなた
トイレ
あなた
さっきの話だけど、みんなの不足を補うために来たのが私。だから、私の不足はみんなで補って欲しい。
あなた
私たちならきっと大丈夫だから。
全員
はい!
道宮結
じゃあ円陣組も!
そんな小っ恥ずかしいことをこんな公衆の面前でするのかと少し遅れをとった藍原であったが、円陣を組むという経験自体がなかった為少しばかり嬉しかったのが本音である。
道宮結
烏野ー!ファイっ
全員
オー!!
.

.

.
最初の試合相手は白戸女子。


確か橙野の進学した高校のはずである。


専ら、彼女はバレーは辞めると言い切っていたため、コート上には…
あなた
いる。
道宮結
え?どうしたの?
あなた
さっきいなかったやつがいる。
道宮結
どの人?
あなた
派手なオレンジ髪。ポジションウィングスパイカー、やばいよ。天内叶歌レベルでやばい。
道宮結
そ、そんなに強いの?!
あなた
とりあえずあれうまく受けれないと点取るのは絶望的だよ。
白戸女子の女バレ部員
ちょっと橙野先輩、ちゃんと並んでください。
橙野明
あーごめんごめん。
後輩に注意されている…


変わらぬ馬鹿さ加減に苦笑いが零れる。
試合開始のホイッスルが鳴って握手に行く際、藍原のネットの真正面にいたのは橙野。
あなた
めい、元気?
橙野明
ん?私?元気だヨ〜、ってあなたじゃん!久しぶりだネ。
あなた
久しぶり。バレー部だったんだね。
橙野明
ううん違うんだよ〜、今年助っ人頼まれてしゃーなし大会出てる。
あなた
私と一緒だね。
橙野明
ええあなたも?でも膝大丈夫?
あなた
大丈夫大丈夫。
橙野明
そっかそっか。それなら今日もいいトスあげてほしいナ。
あなた
あんた私のトスは打てないでしょ。敵なんだから。
橙野明
そうだった忘れてたべ。え、あなたもしかして敵チーム?
あなた
そうじゃなかったらネットのこっち側にいないよ。
橙野明
あなたのトス打てないなら帰りたいナ〜
白戸女子の女バレ部員
橙野先輩バカなんですかいつまで経っても試合始まりませんよ。それに私のトスは不満ですか?
橙野明
うん打ちにくいから嫌いだヨ。
この子セッターなのか、大変な思いをしているだろうな。


橙野は、その日の気分によって打ち方も変わるしスピード、高さも変わるから合わせるのはきっと難しかったはずである。


それに加えて、目をつぶって打つのだから尚のこと。
あなた
(明はなんとかなるか、)
と橙野の攻撃を楽観視していた自分の詰めの甘さが、後悔を巻き起こすとは思ってもいなかった。

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